金己男

金己男（キム・ギナム）の生涯と影響

金己男（1929年8月28日 - 2024年5月7日）は、北朝鮮において長きにわたって重要な政治的役割を果たした人物です。彼は朝鮮民主主義人民共和国における政治家であり、朝鮮労働党中央委員会の政治局員、書記局書記、さらには副委員長を務めていました。その業績の中で、彼は金日成、金正日、金正恩の3代にわたる指導者たちの正当性や偶像化を推進する使命を担っており、プロパガンダ活動において非常に重要な地位を占めていました。その結果、彼には「北朝鮮のゲッベルス」とか「プロパガンダのゴッドファーザー」といった異名が付けられています。

金己男は、咸鏡南道永興郡で生まれましたが、彼の出生地については中華民国の遼寧省との説もあります。幼名は金東参で、彼の父は金択世であり、兄には後に名を改めることになる金永南（当時の名前は金明参）がいます。彼は幼少期から教育に優れ、万景台革命学院や金日成総合大学を経てソ連のモスクワ国際大学でも学びました。

彼の政治キャリアは1976年に始まり、朝鮮労働党に入党後、労働新聞社の責任主筆を務め、1977年には最高人民会議代議員として活動を開始しました。1980年の党大会では中央委員会に選出され、1985年には党宣伝扇動部長として党の広報活動を担うこととなります。彼が持つ政治的影響力は年を追うごとに増し、1992年には党書記にも任命され、宣伝業務を一手に担当しました。

金己男は2009年に韓国の元大統領金大中が亡くなった際、北朝鮮から遣わされた弔問団の一員として韓国を訪問するなど、外交面でも活動を行いました。その後、2010年に開催された党の会議では党中央委員会政治局員や書記局書記として再選されています。2011年には金正日の国家葬儀委員会のメンバーにも選ばれ、国葬時にはその中心的人物でもありました。

しかし、2015年の最高人民会議では降格の憶測が立つも、すぐに復権し、2016年には新設された党中央委員会副委員長に就任しました。また、同年には新しく国務委員会が設立され、そのメンバーに選ばれました。2018年には国務委員からの解任が報じられ、政治的立場は不透明になっていきます。2019年には党中央委員会の顧問に就任しましたが、彼の政治的影響力は次第に減少していったのかもしれません。

金己男は2024年5月7日の午前10時、多臓器不全のため94歳で亡くなりました。死去後すぐに金正恩が弔問に訪れ、9日には金正恩を葬儀委員長とする国葬が執り行われました。彼の死去は北朝鮮の政治状況に一定の影響を与える可能性があるため、今後の動向が注目されます。

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