金恵淑

金恵淑（キム・ヘスク）：強制収容所の真実を語る人権活動家

金恵淑（キム・ヘスク、김혜숙）は、北朝鮮における人権侵害の実態を告発する人権活動家です。彼女自身、政治的な理由で北朝鮮の強制収容所（第18号管理所、北倉強制収容所）に28年間も収容されたという過酷な経験を持っています。

収容所での非人道的な生活

金恵淑が13歳から41歳までの28年間を過ごした北倉強制収容所は、想像を絶する非人道的な環境でした。収容者たちは「犬よりも酷い扱い」を受け、強制労働を強いられ、看守たちによる虐待が横行していました。

食糧不足は深刻で、飢えをしのぐために、一家で山に入り食べられる草を探す日々を送っていました。収容所では生き残るために必死で、大人も子供も関係なく、目につく草を全て採取し、飢えを凌いでいました。しかし、数日続けてお粥だけを食べる生活では体がむくみ、歩くことさえ困難になることもありました。

金恵淑は、公開銃殺を強制的に見せられたり、収容所に残る兄弟姉妹のために食料を分け与えたりしながら、極限状態での生活を強いられました。2度の流産、原因不明の3人目の子供の死など、悲劇も経験しました。占い師に相談した仲間が絞首刑に処される様子も目の当たりにしました。

命がけの脱北

釈放後、夫を病気で、子供2人を洪水で失った金恵淑は、絶望の淵に立たされ中国への脱北を決意します。しかし、脱北は新たな苦難の始まりでした。人身売買の危険にさらされ、中国公安に捕まり北朝鮮に送還、再び収容所に入れられました。それでも彼女は諦めず、再び脱出を試みます。

中国では、僅かな金で売られ、性的な道具として扱われるなど、想像を絶する屈辱を味わいました。ラオスやタイを経由して韓国を目指す道のりも、命がけの連続でした。ラオスでは、ゴムボートに乗っていた際、隣に座っていた女性がワニに襲われるという悲惨な出来事も経験しました。

断崖絶壁、死体、険しい山道、砂漠、ワニが生息するメコン川など、数々の困難を乗り越え、ついに韓国へたどり着きました。

人権活動家としての活動

2008年に韓国へ入国した金恵淑は、その後、北朝鮮の人権問題について積極的に発言するようになります。2010年には来日し、「北韓情勢講演会」で講演、2011年にはイギリス議会やアメリカ下院外交委員会で証言するなど、国際的な舞台で北朝鮮の人権侵害の実態を訴えました。

加藤健（アジア調査機構代表）によると、金恵淑は北朝鮮の暗殺対象になっている可能性があり、実際に北朝鮮は著名な脱北者や活動家に対する暗殺作戦を活発化させています。

2011年4月には、自身の手記『涙で描かれた収容所』を出版し、収容所での経験を赤裸々に語りました。同年11月には、スイス・ジュネーブでの国際会議で、収容所内での公開処刑や飢餓状態などについて証言を行いました。

著書

『涙で描かれた収容所（눈물로 그린 수용소）』時代精神、2011年4月5日。ISBN 9788990959560。

金恵淑の証言は、北朝鮮の人権問題に対する国際的な関心を高める上で重要な役割を果たしています。彼女の勇気ある行動は、自由と人権のために戦う人々に勇気を与え続けています。

関連項目

北朝鮮人権問題
北朝鮮における死刑
朝鮮民主主義人民共和国の強制収容所
* 脱北者

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