金森又一郎

金森又一郎（かなもり またいちろう、1873年2月3日 - 1937年2月9日）は、日本の実業家であり、近畿日本鉄道（近鉄）の前身となる大阪電気軌道や参宮急行電鉄の実質的な創業者である。金森家の二男でもあり、後に会長となる金森乾次は彼の子息であり、金森茂一郎という孫もまた同様に同社の社長職を経験した。

金森は大阪市に生まれ、裕福な家庭に育ったが、身体が弱かったため、両親の意向で早くから体力をつける道を選ぶ。彼は小学校を中退し、10歳で大阪府庁に勤務を始めた。片道約2.2kmを徒歩で通い、体力を養い勉学にも励む日々が続いた。府庁を辞めた後、七里清介という市議に勤勉さを認められ、海運会社に勤務。その後、大阪と奈良を結ぶ電気鉄道計画に携わることになる。

1910年に奈良軌道を設立し、同年10月には社名を大阪電気軌道に変更。初代社長には廣岡恵三が就任し、金森は取締役支配人として会社運営に関わった。しかし、資金繰りが厳しく、社長が短期間で辞任する中で、金森は困難な状況を打開するため尽力した。1914年には大阪上本町から奈良へ至る電気鉄道が開業したが、利用者が少なく経営は厳しいものとなった。金森は、資金調達のために宝山寺へ賽銭を借りに赴き、その証拠書類も残されている。

やがて、経営難に直面し他の幹部も次々と辞めていく中、金森は新たな経営陣を整え、再建に向けた様々な施策を進めた。1926年に社長となり、経営における実権を握った。1927年には、将来の社長となる佐伯勇を登用することになるが、当初はその高学歴を懸念し、採用をためらったという面白いエピソードもある。

1930年には子会社である参宮急行電鉄により、伊勢市駅までの延伸を達成し、翌年には宇治山田駅への延伸も実現した。また、1936年には伊勢電気鉄道と合併し、名古屋進出の基盤を築く。こうして、金森は大阪と伊勢を結ぶ第一の鉄道路線の形成に貢献した。

しかし、1937年2月9日に金森は自宅で肺気腫と急性肺炎のために亡くなる。享年64歳。彼の業績と生涯は、近鉄の歴史に大いに影響を与え、その後の発展に寄与した。金森又一郎の名は、今もなお日本の鉄道業界の先駆者として刻まれている。

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