金沢市民の歌

金沢市民の歌

「金沢市民の歌」は、日本の石川県金沢市によって制定された市民歌です。この歌は、作詞を小松眞吾氏、作曲を今井松雄氏が手がけています。

金沢市には、それ以前の大正12年（1923年）に、後の「金沢百万石まつり」の前身である第1回金沢市祭の開催を記念して制定された「金沢市歌」（作詞：鴻巣盛広、作曲：金沢市唱歌研究会）が存在しました。

しかし、戦後間もない昭和24年（1949年）を迎え、市制施行60周年という節目を迎えたこと、そして新たな金沢市役所の計画策定が進められていたことを記念し、市の新たなシンボルとして市民歌の制定が企画されました。歌詞については、北国毎日新聞社と共同で広く市民からの懸賞募集が行われました。

この歌詞募集に入選した小松眞吾氏は、当時、戦地からの復員直後でした。氏は後年の回顧で、「戦地から帰る汽車から見た日本は、焼け野原や荒れた土地ばかりでした。その中で、戦火を免れた金沢の街並みを見て、心から安堵したのです。この街が好きだ、明るく発展させたい、そうした強い思いで作詞しました」と語っており、歌に込められた郷土への深い愛情と未来への希望がうかがえます。作曲は、当時の金沢大学教育学部教授であった今井松雄氏（1899-1976）に依頼されました。歌は昭和24年3月25日に制定され、同年4月3日には発表演奏会が開催されました。

制定当時、タイヘイレコードからは「市政60周年記念盤」として、野町小学校児童合唱団による斉唱を収めたSPレコード（規格品番：M2023）が製造されました。現在では、平成9年（1997年）に収録された、歌手のしゅうさえこ氏による女声カバー音源が主に利用されています。

戦前から市町村歌が存在していた自治体の中には、戦後復興期に、以前の歌詞が軍国主義的な内容を含むなどの理由から、新たな歌に作り替えられた事例が少なくありません。しかし、金沢市の場合は、大正時代に制定された「金沢市歌」と、戦後に制定されたこの「金沢市民の歌」の二つの歌が並存する形となっています。

金沢市役所では、これら二つの歌をより多くの市民に聞き慣れてもらいたいという意図から、電話保留音として採用しています。

金沢市に関連する楽曲としては、これらの市歌・市民歌の他にも、昭和55年（1980年）9月に金沢市民憲章の制定1周年を記念して発表された「金木犀の匂う道」（作詞：中田敏明、補作・作曲：小椋佳）などがあります。

このように、「金沢市民の歌」は、戦後の金沢市の復興と発展への願いを背景に生まれ、旧市歌と共に市民に親しまれている大切な歌となっています。

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