金沢百万石まつり

金沢百万石まつりとは

金沢百万石まつりは、石川県金沢市で毎年6月上旬の週末を中心とした3日間にわたって開催される、金沢を代表する祭りです。加賀藩の礎を築いた前田利家公が天正11年（1583年）6月14日に金沢城へ入城した出来事を記念して執り行われます。この祭りは、金沢市と金沢商工会議所が中心となって組織される実行委員会によって運営されています。

祭りの歩み

この祭りの起源は、大正12年（1923年）に金沢市祭として始まった行事にさかのぼります。これは昭和20年（1945年）まで続きました。戦後の昭和21年（1946年）から昭和27年（1952年）にかけては、連合国軍総司令部（GHQ）の指導のもと、「尾山まつり」として形を変えて実施されました。現在の祭りの形態が始まったとされるのは、昭和27年（1952年）4月25日に金沢市と金沢商工会議所が主催した「商工まつり」が第一回とされています。また、江戸時代に盛んだった百日祭がルーツにあるという説もあり、当時の行列は3日間かけて行われていたといわれます。平成元年（1989年）には金沢市制百周年を記念し、5日間にわたって開催されました。

近年の大きな影響としては、新型コロナウイルスの感染拡大がありました。令和2年（2020年）は祭りの歴史上初めてとなる中止が決定されました。翌令和3年（2021年）も、一部行事の中止や行列のみの開催が検討されたものの、最終的には中止となりました。令和4年（2022年）になり、ようやく3年ぶりに百万石行列を含む祭りが開催されました。

主な催し

祭りは金曜日から日曜日までの3日間で行われ、様々な行事が繰り広げられます。

1日目（金曜日）： 祭りの成功を願う祈願祭や献茶式が行われるほか、浅野川では幽玄な加賀友禅灯ろう流しが催されます。また、市内各地の児童生徒が参加する子ども提灯太鼓行列もこの日に行われます。
2日目（土曜日）： 祭りのハイライトである百万石行列が実施されます。豪華絢爛な行列が市内を練り歩き、観客を魅了します。この日は百万石茶会や百万石踊り流しも行われ、街は一層賑わいます。
* 3日目（日曜日）： 百万石茶会が引き続き開催されるほか、加賀百万石「盆正月」や民謡華絵巻といった、加賀藩時代の伝統に由来する行事が楽しめます。夜には百万石薪能が幽玄な雰囲気の中で披露され、祭りを締めくくります。

百万石行列

この祭りの中心となる行事です。かつては「百万石パレード」と呼ばれていましたが、平成12年（2000年）から現在の名称に改められました。開催日は歴史的な利家公の入城日（6月14日）に近い日程で行われていましたが、観光客誘致のため平成12年以降は6月第2土曜日に固定されました。その後、梅雨の影響を避けるため、平成19年（2007年）からは現在の6月第1土曜日に前倒しして行われています。

行列のコースも時代とともに変化しています。かつては金沢市役所前を出発し、長町研修館で終えるルートでしたが、平成18年（2006年）からは金沢駅東広場の「鼓門」をスタートし、金沢城の石川門から入城するルートとなりました。行列は、前田利家公やお松の方をはじめとする歴史上の人物に扮した人々を中心に構成されます。

前田利家公の役は、当初は市役所職員などが務めていましたが、昭和59年（1984年）に地元の俳優である鹿賀丈史氏が起用されて以降、平成元年（1989年）を除き毎年男性俳優が務めています。お松の方役も、かつては市内の百貨店店員が交代で担当していましたが、平成20年（2008年）からは毎年女優が起用されています。

行列の構成要素は多岐にわたります。祭りのシンボルである横断幕を先頭に、市内の小中学生や自衛隊による音楽パレード、ミス百万石に続き、迫力ある加賀獅子や加賀鳶、前田利家公の御神体を乗せた尾山神社御鳳輦などが登場します。さらに、公募で選ばれた子供たちが珠姫に扮する行列や、前田利家公とお松の方、加賀八家老などに扮した行列が続きます。特に前田利家公は、末森城の戦いで着用したとされる金色の大鯰尾の兜をまとい、白馬に騎乗して進みます。

テレビ中継

祭り期間中、石川県内のテレビ局では百万石行列を中心に中継が行われます。平成23年（2011年）以降は、北陸放送（MRO）と石川テレビ放送の2局が主に生中継を行っています。かつては北陸放送が独占中継していた時代もありましたが、後に石川テレビも参入しました。テレビ金沢は過去に中継を行っていましたが、現在は編成されていません。北陸朝日放送（HAB）は開局以来中継は行っていませんが、一部関連番組を放送した事例があります。

近年の出来事

祭りの開催にあたっては、いくつか特筆すべき出来事もありました。

平成30年（2018年）には、協賛行事である加賀友禅灯ろう流しにおいて、火災が発生し、約600個の灯籠が焼損しました。これは、ろうそくが倒れたことが原因とされています。関係者の高齢化や減少もあり、安全対策や新しい灯籠の準備が困難となったことから、翌年度の灯ろう流しは中止となりましたが、令和4年（2022年）からはろうそくをLEDに変更することで再開されています。

令和4年（2022年）の百万石行列では、前田利家公役を務めた竹中直人氏とお松の方役を務めた栗山千明氏に対する撮影・SNS投稿の自粛が実行委員会から要請されました。これは肖像権保護を目的としたものでしたが、祭りの現場でスタッフが掲げたプラカードなども含め、SNSやインターネット上で大きな議論を巻き起こしました。結果として、栗山氏本人が謝罪する事態となり、当時の金沢市長も謝罪コメントを出しました。これは、同年に岐阜県で開催されたぎふ信長まつりにおける木村拓哉氏・伊藤英明氏への対応（撮影制限なし）と対比され、注目を集めました。

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