金沢師管

金沢師管（かなざわしかん）

大日本帝国陸軍が設けた軍事的な管区の一つで、師管に区分される。金沢師管という名称は、異なる二つの時期に存在したが、本項では後者の、1940年（昭和15年）から1945年（昭和20年）に存在した金沢師管について詳述する。この金沢師管は、主に北陸地方を中心とした区域を管轄し、その地域における防衛や兵員・物資の動員といった管区業務を担当した。

設置の経緯と当初の管轄区域

1940年まで、金沢に司令部を置く第9師団が、その管轄区域として石川県、富山県、福井県の全域と、岐阜県、滋賀県の一部にまたがる第9師管を担当していた。明治期に師団制度が導入されて以来、師団とそれを管轄区域とする師管は通常、同じ番号で紐づけられていたのである。

しかし、日中戦争の長期化により、中国大陸へ派遣された師団の帰還が見込めなくなった状況下で、本土防衛体制の強化が課題となった。これに対応するため、第9師団が中国戦線に投入された後、その管轄区域には、戦力的に第9師団よりは劣るものの新設された第52師団を配置することとした。これに伴い、師管の名称も番号から地名に変更されることとなり、1940年7月24日に制定された軍令に基づき、同年8月1日付で陸軍管区表が改定され、金沢師管が新設された。

設置当初（1940年8月1日時点）の金沢師管の管轄区域は、従来の第9師管の範囲と同一であり、以下の地域を含んでいた。

石川県、富山県、福井県の全域
岐阜県の一部: 北部の飛騨地方全域、美濃地方西部（大垣市、安八郡、海津郡、揖斐郡、不破郡、養老郡）
滋賀県の一部: 県北部（彦根市、高島郡、伊香郡、犬上郡、愛知郡、東浅井郡、坂田郡）

この時期、師管は金沢、富山、敦賀、福井の四つの連隊区に分割されていた。金沢連隊区は石川県とほぼ一致していたが、他の連隊区は県境とは一致していなかった。金沢師管は、日本の東部地域を管轄する東部軍管区に属していた。

管轄区域の変更と担当部隊

金沢師管が発足して間もない1940年8月21日、軍令により陸軍管区表のさらなる改定が決定された。この変更は翌1941年4月1日に施行され、金沢師管の管轄区域は大幅に見直された。

1941年4月1日以降: 石川県、富山県、長野県の各全域が金沢師管の管轄となった。

これにより、設置当初含まれていた福井県、岐阜県の一部、滋賀県の一部が管轄から外れ、代わりに長野県全域が加えられた。この変更に伴い、師管内の連隊区も金沢連隊区、富山連隊区、長野連隊区となり、各県と一致するようになった。

管区業務を担当する部隊は、当初は第52師団であったが、1941年12月4日に第52師団に臨時動員が命じられ大陸へ派遣されることになったため、同時に編成された留守第52師団がその業務を引き継ぐことになった。

終戦間際の再編と改称

太平洋戦争末期、戦況の悪化に伴い、日本国内の軍事組織にも再編の動きが見られた。1945年1月22日に制定された軍令により陸軍管区表が再び改定され、同年2月11日に施行された。

* 1945年2月11日以降: 金沢師管から長野県全域が分離され、新設された長野師管の管轄となった。これにより、金沢師管の管轄区域は石川県と富山県の両全域のみとなった。

また、この改定と前後して、金沢師管の所属する上位の軍管区も変更された。従来の東部軍管区から、新たに設けられた東海軍管区へと移管されたのである。この時期の連隊区は、管轄区域に合わせて金沢連隊区と富山連隊区の二つとなった。

さらに、国内管区体制の抜本的な変更が1945年2月9日に決定され、同年4月1日に施行された。これは、留守師団が管区業務を担当する従来の体制を廃止し、師管区という新たな区分を常設の師管区部隊が担当する制度へ移行するものであった。これにより、金沢師管は金沢師管区へと名称を改め、管区業務を担っていた留守第52師団は金沢師管区部隊に転換された。

このように、金沢師管は戦時中の緊迫した情勢下で、管轄区域や所属組織、担当部隊を何度か変更しながら、本土防衛と動員の中核組織として機能したが、終戦直前にその名称と組織形態を金沢師管区へと変え、終戦を迎えた。なお、1873年から1885年にかけて存在した同名の師管については、別の項目で扱われることが一般的である。

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