金砂福

金砂福と彼の人生

金砂福（キム・サボク）は、1932年に誕生し、大韓民国でタクシー運転手として知られています。彼は日本統治下の朝鮮で日本語を習得し、その後、英語も独学で学びました。1970年代にはソウルでタクシー業を営み、主にソウルパレスホテルの専属タクシー業者として活動していました。金は特に外国人客との接客が多く、様々な国のジャーナリストと交流を持っていました。

文世光事件との関わり

1974年8月15日、光復節を祝う行事が開催される中、文世光という男が朝鮮ホテルに宿泊していました。彼は国立劇場へ向かうためのタクシーを求めましたが、その時は全てのタクシーが出払っていたのです。そこへ偶然、ソウルパレスホテルのタクシーが現れ、何とか文はそのタクシーに乗ることになりました。運転手は金砂福ではありませんでしたが、彼がこのタクシーを所有していたため、この事件に彼の名前が関連づけられることとなりました。文世光は在日朝鮮人であり、事件を起こす前にそのタクシーを利用したとされています。

ヒンツペーターとの出会い

金は外国人客とのやり取りを中心に働いていましたが、その中でも特にドイツのジャーナリストであるユルゲン・ヒンツペーターと知り合いました。彼らの出会いは、韓国での社会的な出来事が注目されるきっかけとなりました。1975年8月には金がヒンツペーターとともに張俊河死亡事件の現場に立ち会っています。

光州事件への貢献

1980年5月、光州で発生した事件は、金砂福の人生において重要な転機となりました。ヒンツペーターは光州で起きている不穏な動きに気づき、その情報を伝えるために韓国へと向かいました。彼は金浦空港で金と再会し、共に光州へ向かいました。金は、この報道の一環として、光州市内で起きた市民に対する韓国軍の攻撃をフィルムに収め、これが後に世界中に配信されることになりました。これにより、韓国での政府の弾圧が明らかとなり、国際的な議論を呼び起こしました。

映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』

金砂福が広く知られるようになったのは、映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』が公開された後です。この作品は光州事件をテーマにしており、金の英雄的な行動が描かれています。しかし、映画が公開されると、彼が文世光事件に関与していたことが発覚し、評価が分かれることとなりました。特に光州事件に対する見解は分裂し、「北朝鮮の関与」といった主張が議論されました。

金砂福の死とその後の評価

金の存在が脚光を浴びる中で、彼の息子スンピルは、映画の主人公が父であることを明らかにしました。スンピルは、金が光州事件に果たした役割について、評価が分かれていることに言及しながらも、父が無言で民主化に寄与したことを理解してもらいたいと語っています。金は事件後、軍の弾圧に苦しみ、体調を崩し、1984年に肝臓がんで亡くなりました。彼の人生は、ただのタクシー運転手として終わることなく、韓国の歴史に深く刻まれることとなりました。

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