金融債

金融債とは

金融債とは、金融機関が特別な法律の根拠に基づき発行する債券のことです。金融商品取引法上では、特別法人債に分類されます。

概要

現行法では、長期信用銀行債、合併転換法上の特定社債、農林債、商工債、および全国連合会債があります。過去には、外国為替銀行の債券も存在しました。

金融債は、利息の有無により利付債と割引債に分類できます。発行利率は長期プライムレートを基準とし、発行形態によって売出債と募集債に分けられます。

かつては、銀行の定期預金期間に制限があり、普通銀行の社債発行が認められていなかったため、金融債は銀行が長期資金を調達する唯一の手段でした。しかし、銀行の資金調達手段が増えたことなどから、金融債の発行残高は減少し、その存在感は薄れています。また、かつて金融債を発行していた銀行は普通銀行に転換し、発行可能期間も終了したため、現在では商工組合中央金庫、農林中央金庫、信金中央金庫の3組織のみが発行可能です。

金融債は預貯金と似ていますが、一部の金融債は購入時の身元確認が不要で無記名で購入できたため、脱税などに利用されていました。その後、法改正や指導により身元確認が必要になり、ペーパーレス化も進められています。

現状

2000年代以前には、「ワリ～」「～ワイド」「リツ～」といった商品名で個人向けの売出債が発行され、新聞広告やテレビCMも展開されていましたが、2015年時点では個人が新規購入できる売出債はほぼなく、法人向けの募集債が一部残るのみです。

総合口座

発行金融機関によっては、債券総合口座があり、金融債を預けると、購入した債券を担保に当座貸越が利用できます。債券総合口座がない金融機関でも、一般の総合口座に保護預り口座を組み込むことで同様のサービスを利用できます。

種類

利付金融債

「リツ○○」という商品名で発行され、償還期間は一般的に5年です。利息は半年ごとに支払われるか、満期まで複利で運用して元金と合わせて受け取るタイプ（「……ワイド」）があります。1万円から購入可能です。

利付金融債は預金保険法の対象外ですが、「ワイド」は商工組合中央金庫を除き対象となります。

割引金融債

「ワリ○○」という商品名で発行され、償還期間は1年です。額面1万円から購入できますが、購入価格は額面を下回ります。税率が18%と低いため、税引後の手取り額が一般的な金融商品より高くなります。

割引金融債も預金保険法の対象外です。ただし、一部金融機関では、預金保険法の対象となる割引債も提供しています。

発行金融機関・名称

かつて発行していた金融機関

みずほ銀行: 「財形貯蓄型リッキー」「財形貯蓄型リッキーワイド」など。
新生銀行（現・SBI新生銀行）: 「リッチョーワイド」など。
あおぞら銀行: 「リッシン」「リッシンワイド」「ワリシン」「あおぞらスーパー」など。
信金中央金庫: 「リツレン」など（個人向けではない）。
商工組合中央金庫: 「リッショー」「リッショーワイド」「ワリショー」など。

発行停止した金融機関

みずほ銀行（旧日本興業銀行の業務を継承した店舗）: 「リッキー」「リッキーワイド」「ワリコー」「ワリコーアルファ」など。
みずほコーポレート銀行（現・みずほ銀行）: 「みずほコーポレート銀行債券」など。
三菱東京UFJ銀行（現・三菱UFJ銀行）: 「リットー」「ワリトー」「ハイジャンプ」など。
新生銀行（現・SBI新生銀行）: 「リッチョー」「ワリチョー」など。
農林中央金庫: 「リツノー」「リツノーワイド」「ワリノー」など。

発行根拠規定

各金融債の発行根拠規定は法律で定められています。2015年時点では、商工組合中央金庫、農林中央金庫、信金中央金庫の3組織のみが金融債を発行可能です。ただし、一般向けの売出債はすべて発行を終了しています。

まとめ

金融債は、金融機関が発行する債券であり、かつては長期資金調達の重要な手段でしたが、現在ではその役割は縮小しています。個人向けの売出債はほぼなくなり、法人向けの募集債が一部残るのみとなっています。しかし、過去には多様な商品があり、金融市場に一定の影響を与えていました。

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