金融商品に関する会計基準

金融商品に関する会計基準（企業会計基準第10号）の概要

金融商品に関連する会計基準として企業会計基準第10号があります。これは日本の財団法人企業会計基準委員会（ASBJ）によって定められた基準で、金融商品の取り扱いにおける原則と基準が詳細に設定されています。この基準は、企業会計原則の内、資産の評価方法に関する部分を補完するものであり、金融商品の特性に基づく会計処理が優先されることを特徴としています。また、この基準は国際会計基準（IAS）第32号や第39号、さらには国際財務報告基準（IFRS）第7号に対応している点も重要です。

制度の趣旨

この会計基準は、証券や金融市場の国際化、加えて金融商品の取引が複雑化する中で、適切な会計処理を確立することを目的としています。市場のニーズに応じて、新しい金融商品や取引手法の会計処理を体系的に整備することを目指し、企業が正確に財務状況を報告できるようになっています。

制度の概要

基準の主なポイントは以下の通りです。

1. 有価証券の評価: 有価証券はその保有目的に応じて、売買目的有価証券、満期保有目的債券、子会社および関係会社株式、その他有価証券の4つに分類されます。それぞれの分類に応じて異なる会計処理が行われます。具体的には、売買目的の有価証券やその他の有価証券は毎期時価評価を実施し、時価の大幅な下落があった場合には減損処理が求められます。

2. 貸倒引当金の計上: 貸倒引当金は、一般債権や貸倒懸念債権、破産更生債権などに基づいて分類され、適切な引当金額が算定されます。この計上により、企業は将来的な貸倒リスクに備えることができます。

3. デリバティブ取引の取り扱い: デリバティブ取引については、未実行のものでも時価評価が適用され、含み損益が財務諸表に反映されます。また、為替や金利のヘッジ目的で行うデリバティブ取引に対して、特定の要件を満たす場合には「ヘッジ会計」が認められる制度も設けられています。

4. ゴルフ会員権の評価: ゴルフ会員権については、時価が著しく下落した場合に減損処理を行うことが求められます。

税法との関連

法人税法では、評価損益の取り扱いについて厳格な考え方が求められ、原則として評価損益は認められないことが述べられています。ただし、売買目的有価証券については、帳簿価額とその時価との差額が評価損益として計上されることが認められており、また売買目的外でも大幅な時価の下落があった場合には、その差額を評価損として計上することも可能です。

このように、金融商品に関する会計基準は、企業が財務情報を正確に報告し、市場の信頼性を保つために不可欠な役割を果たしています。

もう一度検索