金鍾漢

金鍾漢（キム・ジョンハン）について

金鍾漢（キム・ジョンハン、韓国名：김종한、日本名：月田 茂）は、1914年2月28日に誕生し、1944年9月27日に31歳で亡くなった著名な詩人です。彼は日本統治時代の朝鮮に生まれ育ち、その生涯の中で多くの詩を創作しましたが、活動期間は短命に終わりました。号は「乙巴素」で、これは古代高句麗の宰相に由来しています。

幼少期と教育

彼は咸鏡北道明川郡西面の農家に生まれましたが、養子として医師の伯父に引き取られ、清津府や雄基郡への移住を経て、鏡城中学校及び高等普通学校で学びました。1933年頃から、詩作を始め、雑誌や新聞のコンテストに作品を応募するようになりました。この時期には一時的に満州を放浪することもありました。

文壇デビューと東京での生活

1937年には『朝鮮日報』の新春文芸で「낡은 우물이 있는 풍경（古井戸のある風景）」が当選し、詩作において広く知られるようになりました。その後、彼は日本に渡り、本郷区の日本大学で芸術を学びましたが、学業にはあまり出席せず、美術書を読みあさり、博物館を訪れる生活を送っていました。最終的には、日本大学芸術科を中退し、婦人画報社で働き始めます。

創作活動と執筆

在学中、詩の同人誌を通じて活動し始め、詩人の鄭芝溶の推薦で雑誌『文章』に詩を発表し、文壇に登場しました。彼は鄭芝溶を師と仰ぎ、また著名な詩人佐藤春夫との交流も深めていきます。1941年には朝鮮に戻り、国民文学に寄稿しつつ、自身の詩集をいくつか出版しました。

詩の特徴と評価

金鍾漢の詩は、戦争や社会情勢に対する独自のアプローチが評価される一方で、その親日的な立場から否定的な見方もされています。彼の作品には、戦争を美しい落花に例えた詩や、戦死した兵士の遺族に向けた詩などがあり、戦争を描く一方で、個人の感情や思索は深いものでした。特に1940年から1944年の間に発表した親日的な内容の詩は、多くの論議を呼びました。

また、金鍾漢は「園丁」という詩で特に知られ、今日でも親日詩の代表作とされています。彼の作品は技術的な側面や表現主義的な傾向があり、巧妙に空間感覚を捉えた作品が多く見られます。彼のスタイルは、師である鄭芝溶や他の詩人たちの影響を強く受けています。

結末と評価の変遷

1944年に肺病により早逝した金鍾漢は、その生涯の中で多くの影響を与えましたが、戦後、親日派として否定的に評価されることが多く、韓国では作品の整備が進んでいないのが現状です。一方で日本では、彼の詩の再評価が進み、一部の学者たちによって文学史における影響が模索されています。

彼の作品集として『金鍾漢全集』が2005年に刊行され、彼への関心が再燃しています。金鍾漢の詩は、文学のみならず、歴史的文脈の中での彼の位置を探る手がかりとしても重要とされています。彼の作品は、戦時中の複雑な社会背景を反映した内容が多く、文学者としての金鍾漢は、今後も多くの議論を呼ぶ人物であることは間違いありません。

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