金養建

金養建（キム・ヤンゴン）は、1942年4月24日に生まれ、2015年12月29日に亡くなった、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の政治家です。朝鮮労働党の中央委員会政治局員、書記局書記、国際部長、そして統一戦線部長といった要職を歴任しました。彼の政治キャリアは、北朝鮮の対外関係、特に韓国との関係において重要な役割を果たしました。

1997年に朝鮮労働党国際部長に就任し、国防委員会の参事も務めました。2007年には、対南政策を所掌する党統一戦線部長に就任し、南北関係の改善に努めました。2010年9月の第3回党代表者大会では、党中央委員会書記局書記に選出され、党内での地位をさらに高めました。2011年12月には、金正日総書記の国家葬儀委員会のメンバーに選ばれ、党中央委員会政治局員候補であったことが明らかになりました。

2014年10月4日には、北朝鮮の事実上のナンバー2であった黄炳瑞（国防委員会副委員長、軍総政治局長）と、体育政策を担当する崔竜海（党書記、国家体育指導委員会委員長、前軍総政治局長）と共に、韓国を電撃的に訪問しました。この訪問で、韓国の金寛鎮国家安全保障室長や柳吉在統一相と会談し、今後の南北高官協議の開催に合意しました。また、仁川で開催された2014年アジア競技大会の閉会式にも出席しました。この北朝鮮高官3名の同時訪韓は、日本の外交筋からも「極めて異例」と評価されました。

2015年2月には、党中央委員会政治局拡大会議で、政治局員候補から政治局員に昇格し、党内での影響力を増しました。同年8月には、軍事境界線（DMZ）での地雷爆発事件が発生し、韓国軍兵士2名が重傷を負いました。韓国政府は北朝鮮による仕業と断定し、北朝鮮への批判放送を開始しました。これに対し、北朝鮮は「準戦時体制」を宣言し、南北間の緊張が高まりました。この事態を受け、8月22日から25日にかけて、板門店で南北高官会談が行われ、北朝鮮が地雷事件への遺憾を表明したことを受け、韓国は放送を中止することで合意しました。会談には、韓国側から金寛鎮国家安全保障室長と洪容杓統一相、北朝鮮側から黄炳瑞と金養建が出席しました。この会談メンバーは、2014年10月の会談と同じであり、南北交渉の最高位の窓口であったことを示しています。この際、朝鮮中央通信は金養建を再び政治局員として紹介しました。

2015年12月30日、朝鮮中央通信は金養建が前日の29日に交通事故で死去したと発表しました。73歳でした。金正恩総書記を葬儀委員長とする国葬が執り行われました。北朝鮮では、高官の粛清を交通事故に見せかけることがあると指摘されていますが、金養建の事例については、その可能性は低いと考えられています。韓国メディアは、肝臓がんで闘病中の姜錫柱（党国際担当書記、党国際部長）に代わって外交を統括していた対南穏健派の金養建が死去したことで、今後の北朝鮮の対南政策が硬直化する可能性を指摘しました。実際、金養建の死去直後に北朝鮮は4度目の核実験に踏み切っています。

金養建は、その政治キャリアを通じて、朝鮮労働党の要職を歴任し、特に南北関係において重要な役割を果たしました。彼の突然の死は、北朝鮮の政治情勢に大きな影響を与え、今後の対南政策の行方に注目が集まりました。

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