針すなお

針すなお：似顔絵と武道の達人

針すなお（はり すなお、本名：高閑者 順、1933年3月15日 - ）は、日本の漫画家、イラストレーターであり、武道家としても知られる多才な人物です。政治家、芸能人、スポーツ選手など、多くの著名人の似顔絵を手がけてきた一方で、独自の武術「体の杖（たいのじょう）」を創始したことでも知られています。彼の波乱に満ちた人生と、その多岐にわたる活動を詳しく見ていきましょう。

生い立ちと漫画家への道

針すなおは、佐賀県佐賀市で生まれました。実家は旧佐賀藩の菩提寺である高伝寺で、自身も住職を務めた経験があります。幼少期から絵を描くのが好きで、寺に届けられる布施の包み紙に絵を描いていたそうです。小学校時代には、クラスメートや先生の似顔絵を描いて人気を集め、中学・高校時代には漫画を描き始めました。

佐賀県立佐賀高等学校を卒業後、大和紡績に1年勤務した後、漫画家を目指して1952年に上京しましたが、生活に行き詰まり一度帰郷。その後、佐賀相互銀行に経理係として入社するも、以前訪問した出版社からの誘いで再び上京し、編集の仕事を手伝いながら、雑誌のカットやイラスト、キャバレーの看板描きなどのアルバイトをこなしました。さらに、投稿家として新聞や雑誌の新人漫画欄に作品を送り続け、約5年間の下積みを経て、1956年にプロ漫画家としてデビューしました。

漫画家としての活動

デビュー当初は、複数ページのナンセンス漫画や大人向けの漫画を描いていましたが、自身の中でしっくりこないものを感じていました。その後、漫画集団の会合で手塚治虫から「似顔絵は苦手なんだよ」という言葉を聞き、手塚治虫ですら苦労しているのかと自信を得て、1コマの似顔漫画に専念するようになりました。1978年頃からは朝日新聞政治欄の風刺漫画を担当し、産経新聞でも人物似顔絵カットを担当するなど、全国紙で活躍しました。また、郷里の佐賀新聞でも政治漫画を連載し、地元でもその才能を発揮しています。

2021年には、人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」の似顔絵を手がけるなど、幅広いジャンルでその才能を発揮しています。

受賞歴

針すなおの功績は、数々の賞によっても証明されています。

1973年：第2回日本漫画家協会賞優秀賞（『針すなお似顔漫画集・そっくり』）
1998年：第44回文藝春秋漫画賞（一連の似顔漫画）
* 1998年：佐賀新聞文化賞

人物像

針すなおは、血液型A型で既婚者です。歌うことが好きで、高校時代にはのど自慢大会で賞品を獲得したというエピソードも残っています。1977年には、歌手としてシングルレコードをリリースし、自らスナックを回ってキャンペーンを行うなど、情熱的な一面も持っています。また、2008年には自費で2枚組のCD集『昭和を歌う』を制作するなど、音楽への愛情も深い人物です。

武道家としての活動

針すなおは、武道の愛好家としても知られています。独自の武術「体の杖」を考案し、その普及に尽力しています。合気道と神道夢想流杖術を学び、それらの要素を組み合わせて「体の杖」を創始しました。1990年には、佐賀市内に道場「高伝館」を開設し、現在では全国に300人以上の弟子を抱えるまでになっています。

高伝館のシンボルマークは、佐賀県の県鳥であるカササギ（カチガラス）を針自身がイラスト化したものです。また、武道雑誌『月刊秘伝』にも寄稿しています。

『ものまね王座決定戦』

針すなおは、テレビ番組『ものまね王座決定戦』に、26年間似顔絵カット担当と審査員として出演していました。特に、審査員としては、ほとんどの場合で満点を出さない厳しい評価が特徴的でした。自身は「流行歌はほとんどわからない」と述べており、歌の少しのズレも見逃さず、厳しく評価していました。

その他の活動

針すなおは、その他にも多くの活動を行っています。漫画連載や書籍の出版はもちろんのこと、レコードジャケットや書籍の表紙・挿絵、テレビ番組関連のイラスト、広告など、幅広い分野でその才能を発揮しています。また、映画のタイトルバックやテレビ番組における素材提供など、多岐にわたるメディアで活躍しました。

まとめ

針すなおは、漫画家、イラストレーター、武道家として、多彩な才能を発揮し、その生涯を通じて多くの人に影響を与えてきました。似顔絵や風刺漫画で社会を風刺し、独自の武術で体を鍛え、その活動は今もなお多くの人々に愛されています。

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