鈴木九萬

鈴木九萬（すずき ただかつ）

鈴木九萬は、1895年4月27日に生まれ、1987年4月4日に没した日本の外交官です。茨城県出身で、その生涯を通じて日本の外交に貢献しました。

経歴

鈴木九萬は、茨城県立太田中学校（現在の茨城県立太田第一高等学校）を1914年（大正3年）3月に卒業後、第一高等学校を経て東京帝国大学（現在の東京大学）を卒業しました。1921年（大正11年）に外務省に入省し、外交官としてのキャリアをスタートさせます。

当初は在フランス大使館に勤務し、その後、国際連盟事務局事務官として国際的な舞台で活躍しました。1926年（大正15年）には三等書記官に昇進、1927年（昭和2年）には欧米局第二課に配属されます。1931年（昭和7年）には再び在フランス大使館に勤務し、1932年（昭和8年）に二等書記官、1935年（昭和10年）には一等書記官へと昇進を重ねました。

その後、1936年（昭和11年）に駐エチオピア公使館に勤務し、1937年（昭和12年）には儀典課長に就任。1940年（昭和15年）には駐エジプト特命全権公使として、重要な外交任務を担いました。

第二次世界大戦中には、1942年（昭和17年）に敵国居留民関係事務室長を務め、終戦間近の1945年（昭和20年）には参事官、そして終戦連絡地方事務局連絡官・横浜事務局長として終戦処理に当たりました。1948年（昭和23年）には横浜連絡調整事務局長に就任し、戦後混乱期の対応に尽力しました。

戦後は、1952年（昭和27年）に日本ユネスコ国内委員会事務総長、1955年（昭和30年）には駐オーストラリア特命全権大使、1959年（昭和34年）には駐イタリア特命全権大使を歴任し、国際社会における日本の地位向上に貢献しました。

終戦連絡横浜事務局長としての活躍

特に注目すべきは、終戦直後の1945年9月に終戦連絡横浜事務局長として、連合軍との折衝にあたったことです。重光葵外務大臣の命を受け、連合軍総司令部（GHQ）との直接交渉を行い、連合軍による軍票発行を阻止しました。これにより、日本の通貨主権が維持されることとなり、戦後の日本経済の安定に大きく寄与しました。

また、ロバート・アイケルバーガー合衆国陸軍第8軍司令官との会談では、吉田茂首相がアメリカによる警察予備隊創設構想に同意している旨を伝え、戦後の日本の再建に向けた重要な対話に貢献しました。

栄典と著作

外交官としての功績が認められ、1943年（昭和18年）10月9日には勲三等瑞宝章を受章しました。また、1942年（昭和17年）12月28日にはルーマニア国からグラン・オフィシエ・クーロンヌ勲章を授与されています。

著書として、『終戦から講和まで 日本外交史 26』（監修、鹿島平和研究所編、鹿島研究所出版会、1973年）や、『現代史を語る 6 鈴木九萬 内政史研究会談話速記録』（天川晃監修、現代史料出版、2008年）があります。これらの著作は、当時の外交の実情を後世に伝える貴重な資料となっています。

鈴木九萬は、激動の時代を外交官として生き抜き、日本の国際社会における地位向上に大きく貢献した人物として、その名が記憶されるべきでしょう。

もう一度検索