鈴木亨 (詩人)

鈴木 亨（すずき とおる）

鈴木亨（1918年9月29日 - 2006年12月9日）は、日本の現代詩に貢献した詩人であり、教育者でもありました。神奈川県横浜市に生まれた鈴木氏は、八十八年の生涯を詩作と詩の普及に捧げました。

学問の道では、慶應義塾大学文学部にて国文学を深く学び、さらに同大学院修士課程を修了しました。この時期に詩への志を固め、第二次『四季』に参加し、詩作を発表する傍ら、誌の編集にも携わることで、詩人としての基礎と実践的な経験を積みました。

1939年には、自身が中心となる詩誌『山の樹』を創刊し、長きにわたりその主宰を務めました。これは、自身の詩世界を探求し発表する重要な場であるとともに、同時代の詩人たちとの活発な交流を通じて、詩壇に新たな潮流をもたらす拠点となりました。さらに、1990年からは別の詩誌「木々」も主宰するなど、生涯を通じて詩の可能性を追求し、詩人たちが集い、作品を発表する場を積極的に創出しました。

詩作活動と並行して、鈴木氏は教育者としても多大な影響を与えました。明治大学、跡見学園女子大学、そして宇都宮文星短期大学において教授を務め、文学、特に現代詩に関する豊富な知識と経験を多くの学生たちに伝えました。教室では、詩の持つ言葉の力や豊かな表現の多様性を説き、若い世代に文学への関心を促し、後進の育成に力を尽くしました。

鈴木亨氏は精力的に詩作を続け、多くの詩集を世に送り出しました。初期の代表的な詩集には、1960年刊行の『少年聖歌隊』があります。その後も、『遊行』、『歳月』など、時を経るごとに新たな詩集を発表し続け、晩年に至るまで創作意欲は衰えを見せませんでした。特に、1997年に上梓された詩集『火の家』は詩壇で高く評価され、翌1998年には権威ある丸山薫賞を受賞するという栄誉に浴しました。これは、長年の詩業が実を結んだ瞬間であり、彼の代表作の一つとして後世に語り継がれています。詩集以外にも、詩論や詩の鑑賞に関する著作も多く、詩の魅力を一般に分かりやすく伝える活動も行いました。

また、鈴木氏は自身の創作活動だけでなく、詩集の編纂にも携わりました。夭折の詩人、八木重吉の詩集を編んだほか、若い読者層を対象とした『愛の詩集』を編纂するなど、優れた詩人たちの作品を広く紹介し、文学遺産の継承にも貢献しました。

2006年12月9日、肺炎のため八十八歳でその生涯を閉じました。鈴木亨氏の詩作、詩誌主宰、教育、研究、そして編纂という多岐にわたる活動は、日本の現代詩の発展に確かな足跡を残しました。彼の紡いだ言葉と、彼が育てた人々の心の中に、その豊かな詩情と文学への情熱は今も生き続けています。

主要著作

『少年聖歌隊』（ユリイカ、1960年）
『近代詩入門 夜明けにうたう詩人たち』（大泉書店、1969年）
『鈴木亨詩集』（角川書店、1973年）
『夢想者の系譜 現代詩探訪』（泰流社、1984年）
『遊行 詩集』（花神社、1986年）
『現代詩鑑賞 20人の詩人たち』（桜楓社、1987年）
『歳月 詩集』（花神社、1992年）
『火の家 詩集』（花神社、1997年）
『埋もれたラ・マルセイエーズ 詩集』（花神社、1999年）
『星条旗 詩集』（花神社、2002年）
『柳絮 詩集』（花神社、2004年）
『鈴木亨詩集』（土曜美術社出版販売〈新・日本現代詩文庫〉、2005年）

主要編纂

『八木重吉詩集』（白凰社〈青春の詩集〉、1967年）
編『愛の詩集』（偕成社〈ジュニア版日本文学名作選〉、1972年）

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