鈴木則子 (中国残留婦人)

鈴木則子の生涯と活動

鈴木則子（すずき のりこ、1928年12月19日 - 2011年1月26日）は、元中国残留婦人であり、NPO法人「中国帰国者の会」を設立し、会長として長い間活動を続けました。彼女は2011年に肺がんでこの世を去り、享年82歳でした。彼女の人生は苦難に満ちていますが、それを乗り越え、他者のために尽力した姿勢は多くの人々に勇気を与えました。

来歴

鈴木則子は東京出身で、実家は京橋にあった青物問屋の家系でした。1943年、彼女は旧制日本橋高女在学中の時、家族とともに中国東北部、旧満州へと渡ることになります。この渡満は、転業開拓団としての活動であり、参加したのは仁義仏立講開拓団という団体でした。彼らが入植したのは興安南省の哈拉黒（ハラヘイ）で、歴史的にも重要なノモンハン事件の近くでありました。

過酷な逃避行

しかし、戦局が厳しくなる中、鈴木は苦難の道を歩むことになります。逃避行の際、彼女は脚に銃弾の破片が刺さり、さらに崖から突き落とされたことで股関節を脱臼しました。この時、意識を失って倒れこんでいた彼女は、中国人の人買いに捕まり、「3年間奴隷でした」と回想しています。新中国の成立に伴い、その人買いは逮捕され、死亡します。鈴木はその後の証言で、「敵であった日本人を差別しない新政府の態度に目を開かれた」と述べており、彼女の経験は深いものとなりました。

帰国と新たな人生

鈴木は後に中国人男性と結婚し、1978年に帰国の途につきます。帰国後の1982年、彼女は「中国帰国者の会」を設立し、自ら会長に就任しました。難民としての経験を持つ鈴木は、帰国した多くの人々の状況を改善するために尽力しました。1988年には東京弁護士会から第3回人権賞を受賞し、彼女の活動は広く認められるようになります。

国への訴え

さらに、2001年には、国による帰国支援の怠慢を理由に損害賠償を求めて提訴し、彼女は公正を求める姿勢を示しました。

人柄と理念

鈴木則子は、母としてチルドレンに対して「日本人でも中国人でも、人として正しいことをするのが大切」という言葉を口癖にしていました。彼女の信念は、国境や人種を超えた普遍的な価値観を示しています。

参考文献

鈴木則子の物語は、彼女自身の著作や、多くの支援者による取り組みでも知られています。たとえば、小川津根子の著書『祖国よ―「中国残留婦人」の半世紀』や、『国に棄てられるということ　「中国残留婦人」はなぜ国を訴えたか』などがあります。これらは、鈴木の生涯や彼女の訴えがもたらす意義を知る手助けになるでしょう。

彼女の人生は、戦争や苦難を乗り越えたひとりの女性の物語として、後世に継承される価値あるものであるといえるでしょう。

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