鈴木實 (海軍軍人)

鈴木實：軍人から実業家へ、波乱の生涯

鈴木實（すずき みのる、1910年4月20日 - 2001年10月28日）は、大日本帝国海軍の軍人であり、後に実業家としても名を馳せた人物です。東京市麹町に生まれ、海軍兵学校（60期）を卒業後、海軍中佐として太平洋戦争を含む数々の戦いに参加しました。

海軍軍人としてのキャリア

府立一中時代は陸上競技部と剣道部に所属し、陸上競技部では主将を務めるなど、スポーツにも優れた才能を発揮しました。海軍兵学校では勉学に苦労したものの、卒業後は飛行学生として航空戦の道を歩み始めます。日中戦争では、中国戦線においてその卓越した操縦技術と戦術眼で数々の戦果を挙げ、個人感状や論功行賞を受けるなど、その名を轟かせました。

1937年、龍驤に所属していた鈴木は、宝山上空戦でカーチス・ホークⅢを多数撃墜。また、1941年には、蘭州で再建を図る中国空軍に対し、零戦隊を率いて陝西省の飛行場を攻撃し、敵機を多数破壊するなど、その武勇は広く知られるところとなりました。しかし、着陸時の事故で頚椎を損傷し、生死をさまよう重傷を負うというアクシデントにも見舞われています。

太平洋戦争では、ポート・ダーウィン空襲などで活躍。第二〇二海軍航空隊飛行隊長として、部隊を率い、「ヒゲ部隊」として恐れられました。特に、クライブ・コールドウェル中佐率いるオーストラリア空軍との空戦では、圧倒的な勝利を収めるなど、南西方面での零戦の優位性を示すことに貢献しました。終戦間際には、神風特攻隊を送り出す立場となり、複雑な心境を抱えながら終戦を迎えます。

戦後の転身

終戦後、鈴木は元上官の伝手でトラック運転手として働きましたが、石油製品の配給制により仕事が激減。その後、従兄の紹介でキングレコードに入社し、実業家としての第二の人生を歩み始めます。音楽の知識はなかったものの、その卓越した経営手腕と人を見る目は、多くの才能を開花させました。大阪支店長、営業部長などを歴任し、最終的には常務取締役として営業本部長兼洋楽本部長を務め、1978年に顧問として退任するまで、その手腕を発揮しました。

特に、大月みやこを発掘したほか、カーペンターズやセルジオ・メンデスなどの海外アーティストを日本に紹介するなど、音楽業界に大きな足跡を残しました。昭和50年代のFM東京「ジェットストリーム」などのムード音楽ブームの仕掛け人の一人としても知られています。

死と遺言

2001年10月28日、鈴木實は91歳でその生涯を閉じました。葬儀は一切不要とし、遺灰をアラフラ海に散布してほしいという遺言を残し、その波乱に満ちた生涯に幕を閉じました。

まとめ

鈴木實は、軍人としての卓越した能力と、実業家としての経営手腕を併せ持った人物でした。海軍では数々の戦果を挙げ、戦後は音楽業界で才能を開花させました。その波乱に満ちた生涯は、多くの人々に感動と勇気を与え続けています。

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