鈴木憲夫

鈴木 憲夫（すずき のりお）は、1953年5月3日に宮城県で生まれた作曲家、詩人、合唱指揮者です。宮城県内で育ち、東北学院中学校・高等学校を経て、東北学院大学を卒業しました。

学生時代から音楽の才能を発揮し、旺文社主催の全国学芸コンクール音楽部門で、高校時代に合唱曲、大学時代には管弦楽曲でそれぞれ第一席を獲得しています。これを機に、審査員であった作曲家・團伊玖磨の紹介を受け、対位法を土肥泰に師事。團氏からは長期にわたり薫陶を受けました。また、子供の頃から親しんでいたヴァイオリンでは、仙台のオーケストラでコンサートマスターを務めたほか、高校生によるユーゲントコーラスを結成・指揮するなど、演奏家・指揮者としても活動しました。この時期には、東北放送で劇伴やCMソング、新体操の音楽制作も手掛けています。

1977年、埼玉県に移り住み、東京音楽大学作曲科研究科にて、当時の学長である伊福部昭のもとで作曲技法などを深く学びました。一般大学出身者としては異例の聴講生でしたが、伊福部氏に直接師事することを許されたのです。さらに、指揮を山田一雄に師事し、10年間にわたってその指導を受けました。この時期に、鈴木憲夫は作曲活動を本格的に開始します。

彼の創作活動は多岐にわたりますが、特に合唱曲は多くの人に知られています。宮沢賢治の詩や、自らが作詞したテキスト、あるいは典礼文やお経など、様々な言葉に基づいた作品を発表しており、混声、女声、男声、児童といったあらゆる形態の合唱曲を手掛けています。代表作には混声合唱曲「永訣の朝」「雨ニモマケズ」「般若心経」「マザーテレサ 愛の言葉」「レクイエム」などがあり、数多くの楽譜が出版されています。合唱曲以外にも、歌曲、ピアノ曲、器楽曲、管弦楽作品など、幅広いジャンルの作品を創作しています。

指揮者としては、プロオーケストラや合唱団の指揮台に立ちましたが、特に合唱指揮者としては、自作の普及にも力を注いでいます。また、講演やコンクールの審査員、合唱講座の講師なども務め、音楽界の発展に貢献しています。

1978年には校歌の編曲を主な目的とした「青年作曲家評議会」を設立し、多くの学校や団体の歌を手掛けました。また、地域の文化団体においても要職を歴任しました。2007年からは、埼玉県鳩山町に居を移し、創作活動に専念しています。

主な受賞歴として、笹川賞創作曲コンクール合唱部門での2位入賞や、埼玉文学賞詩部門準賞があります。また、地方自治体からの委嘱による記念作品や行進曲なども作曲しています。

社会貢献活動にも熱心で、2006年に設立した「音楽ほほえみ基金」を通じて、CDの寄贈や東日本大震災の被災地への支援活動を行いました。

国際的な舞台でも活動しており、チェコ、ウィーン、ニューヨーク、ローマ、ハンガリーなど、世界各地で自身の作品を発表し、指揮を務めています。2014年にはローマ教皇に謁見し、作品を献呈。また、サンピエトロ大寺院でのミサに聖歌隊として参加し、自作の宗教曲を演奏するという経験も持ちます。2019年には、ウィーンのシュテファン大聖堂で管弦楽付き「レクイエム」が世界初演されるなど、国際的な注目も集めています。

著書としては、ソルフェージュに関する書籍を複数出版しています。鈴木憲夫は、作曲、詩作、指揮と多様な才能を発揮し、特に合唱音楽の世界において、その独自の世界観とメッセージ性を持つ作品を通じて、国内外で活動を続けている音楽家です。

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