鈴木正文 (編集者)

鈴木正文：異彩を放つ編集者・ジャーナリストの軌跡

鈴木正文（すずき まさふみ、1949年 - ）は、日本の自動車およびファッション業界において、編集者、ジャーナリストとして独自の存在感を放つ人物です。『NAVI』（二玄社）、『ENGINE』（新潮社）、『GQ JAPAN』（コンデナスト・ジャパン）という、各時代を代表する雑誌の編集長を歴任しました。

学生運動から自動車雑誌の世界へ

慶應義塾大学文学部在学中は学生運動に身を投じ、1969年の東大安田講堂事件にも参加したという経歴を持ちます。その後、大学を中退。業界紙の英字紙記者を経て、1983年に二玄社に入社し、自動車雑誌「NAVI」の創刊に携わりました。1989年には二代目編集長に就任。既存の自動車雑誌にはない独自の視点を持ち込み、社会問題や政治的なメッセージを記事に盛り込みました。毛沢東語録を引用したり、フランスの核実験に抗議するデモを呼びかけたり、湾岸戦争時には反戦デモを企画するなど、その「左翼的」な姿勢は当時大きな話題となりました。

「ミーハー」への転身と編集部内の騒動

しかし、1991年のソビエト連邦崩壊と冷戦終結後、鈴木は一転して高級輸入車やブランド品への憧憬を公言するようになります。この変化は、かつて「共産主義者」を自称していた鈴木の変節として、周囲からは「裏切り者」と見なされるようになりました。また、編集部運営に対する反発から、1993年初頭には編集部員が大量離脱するという騒動も起こりました。しかし、二玄社経営陣は鈴木の編集長としての手腕を評価し、彼を留任させるという決断をしました。

「ENGINE」創刊、そして「GQ JAPAN」編集長へ

2000年、新潮社にて自動車雑誌「ENGINE」を創刊し、初代編集長に就任。この雑誌では、自動車だけでなくファッションに関する記事を積極的に取り入れ、新たな読者層を開拓しました。その後、2012年には「GQ JAPAN」の編集長に就任。就任中は自身の連載記事を持つだけでなく、メディア出演も積極的に行い、雑誌の認知度向上に貢献しました。

現在の活動

2021年に「GQ JAPAN」の編集長を退任後、時代の精神を探求するマルチプラットフォーム「ZEITGEIST（ZG）」を立ち上げ、主宰しています。また、フリーのエディター、ジャーナリストとして、自動車雑誌「CAR GRAPHIC」にコラムを寄稿するなど、多岐にわたる活動を展開しています。

人物像

東京都出身で、ドイツ人のクォーターという血筋を持ちます。10代の頃は「みゆき族」のようなファッション好きで、28歳で自動車免許を取得したことをきっかけに自動車に興味を持ち始めました。これまでに3000台以上の車をテストし、そのうち50〜60台ほどを所有してきたという、生粋の自動車愛好家でもあります。

著書

鈴木正文は、自身の思想や経験をまとめた著書も多数発表しています。

『ENSŪ BUNKO: ○✕（まるくす）』（1995年、二玄社）
『走れ！ヨコグルマ』（1998年、小学館文庫）
* 『スズキさんの生活と意見』（2012年、新潮社）

まとめ

鈴木正文は、その異質な経歴と独自の視点によって、常に注目を集めてきた編集者・ジャーナリストです。学生運動から自動車雑誌、そしてファッション誌へと転身するという、そのユニークなキャリアは、メディア業界における既存の枠にとらわれない多様な可能性を示唆しています。彼のこれまでの活動は、自動車とファッションという異なる分野を結びつけ、新しい価値観を生み出すものでした。今後もその動向は注目されることでしょう。

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