鈴木雅之 (国学者)

鈴木雅之：幕末の国学者、独自の宇宙観を提唱

鈴木雅之（すずき まさゆき）は、1837年（天保8年）に下総国埴生郡南羽鳥村（現在の千葉県成田市）で生まれ、1871年（明治4年）に34歳で亡くなった幕末の国学者です。百姓の家に生まれましたが、その学問への情熱は非常に強く、独学で国学を深く探求しました。

若年期と学問への目覚め

幼名は一平といい、20歳で結婚するも、家庭を顧みずに放浪の生活を送りながら学問に励みました。近隣の有力な家に身を寄せながら学び、その間に二番目の妻を迎えています。独学で知識を深める中、同郷の歌人である神山魚貫に歌学を学び、平田篤胤の学派から国学の影響を受け、国学者としての才能を開花させました。

国学者としての活躍

鈴木雅之の主著である『撞賢木（つきさかき）』では、天御中主神を宇宙の中心とする独自の哲学が展開されています。この中で、宇宙に存在する全てのものは、生成の道を絶えず繰り返すことで存在し、その道を尽くすことで死を迎えると説いています。また、天御中主神をはじめとする天神の魂が万物に分与されることで宇宙が顕現し、天神の魂を持つ人間は生成の道を全うし、その魂はやがて天に昇ると考えました。特に天御中主神は、魂のみからなる根源的な存在であり、他の天神や天照大神とは異なる創造主宰神であると位置づけています。この思想は、朱子学的な天地生成の考え方にも通じるものがあります。独学でありながらも、独自の解釈で国学における産霊の説を主張しました。

晩年と明治維新後の活動

晩年、鈴木雅之は多くの著作を執筆し、村落の慣習の改革や国学に基づいた祭礼の復興、村の発展策などを提唱しました。明治維新後の1869年（明治2年）には、同じく神山門下であった伊能穎則の招きで上京し、大学校の少助教に任ぜられ、穂積姓に改姓しました。その後、宣教使中講義に転じましたが、教義をめぐる混乱を批判する建白書を提出するも、自身の主張が受け入れられることなく急逝しました。その短い生涯の中で、独自の宇宙観と国学の発展に貢献しました。

主な著作物

代表的な著書
『撞賢木（つきさかき）』
『古事記訳解』
その他の著書
『歌学正言』
『日本書紀名物正訓』
* 『民政要論』

鈴木雅之の業績は、幕末の国学において独自の視点をもたらし、その思想は後世の研究者にも影響を与えています。彼の著書は、当時の社会状況や思想を理解する上で重要な資料となっています。

もう一度検索