鈴田牢

鈴田牢（すずたろう）の歴史と概況

鈴田牢は江戸時代の初期に、大村の鈴田村（現在の大村市）に設立された牢獄です。この牢は元和3年（1617年）に建設され、その後5年間にわたり、宣教師やキリシタンたちが収容され続けました。当時の日本において、キリシタンは弾圧の対象となっており、鈴田牢もそのような宗教的迫害の歴史と深く結びついています。

設立の背景

鈴田牢が設立された背景には、1619年にガスパル・ルイスによって報告された事件があります。この文献には、大村で長崎奉行の長谷川藤正に捕えられた6人の修道者が記されています。また、1618年には有名な聖人であるカルロ・スピノラ神父が長崎で捕らえられ、ここに収監されたことが記録されており、彼の手紙によってその詳細が後世に伝えられています。

元和5年（1619年）8月には、収容者が増加したため、長谷川藤正の指示で新しい牢が建設されました。この新しい牢の設計は、以前の藁葺きの古い家から移行し、より耐久性のある構造となっていました。しかし、スピノラ神父の記録によれば、新しい牢も依然として厳しい環境のものであり、風が通り抜け寒さが厳しかったことが伝えられています。新しい牢は、周囲に二重の囲いが施され、その内側には監視役人のための番屋も設置されていました。

牢内生活の実態

鈴田牢には32人の宣教師やキリシタンが収容され、彼らは刑の執行を待ちながら極めて過酷な生活を強いられていました。狭い空間に大勢が押し込まれ、食料も乏しく、主に玄米と焼き鰯が与えられ、たまに大根の葉の汁が付けられる程度でした。このような状況の中でも、彼らは信仰を失うことはなく、毎日ミサを行うなどして精神的な支えを持ち続けていました。

元和8年（1622年）の元和の大殉教の際には、スピノラ神父を含む囚人たちが長崎へ連れ去られる嚴しい状況が展開されました。彼らは馬の背に繋がれ、まるで獲物のように扱われていました。この歴史的事件は、鈴田牢の存在が宗教的迫害に直結していたことを示しています。

その後の動向と特別牢の設置

元和の大殉教の後、フランシスコ会の神父たちであるルイス・ソテロと笹田ルイスが日本に密入国し捕らえられました。幕府は特にソテロの処遇に苦慮し、彼のために新たな特別牢を設けるよう大村氏に命じました。これにより、鈴田牢は使われることなく空になり、その後新たに捕われた宣教師たちが特別牢に収監されることになりました。

このように、鈴田牢は江戸時代における宗教的迫害の象徴的な存在であり、数多くの宣教師たちがここで苦しい日々を過ごしました。その歴史は、今なお日本の歴史の一部として重要視されています。

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