元和の大殉教

元和の大殉教：江戸初期のキリスト教弾圧の悲劇

元和の大殉教は、江戸時代初期の元和8年（1622年）に長崎で発生した、キリスト教徒に対する大規模な処刑事件です。この日、55名もの信者が火刑や斬首によって命を奪われました。この出来事は、日本のキリシタン迫害史の中でも、一度に最も多くの信徒が処刑された事件として知られています。また、海外にも詳細が伝えられたことで、日本の殉教史における重要な出来事の一つとして広く認知されています。

事件の背景

徳川幕府は、豊臣秀吉の禁教令を継承し、キリスト教を厳しく禁止しました。宣教師や伝道士は捕らえられ、牢に監禁される日々が続いていました。処刑された信者たちは、大村や長崎の牢獄に数年間収容されていましたが、最終的に全員が西坂での処刑を命じられました。

処刑の様子

処刑されたのは、神父や修道士だけでなく、老若男女の信徒たちでした。特に、宣教師を匿った家族は、一家全員が処刑されるという悲劇も起こりました。

火刑に処されたのは25名で、その中にはイエズス会、フランシスコ会、ドミニコ会の司祭や修道士が含まれていました。イエズス会のカルロ・スピノラ神父もその一人であり、彼は数学や科学に精通し、日本初の月食の科学的観測を行った人物として知られています。

残りの30名は斬首されました。この中には、スピノラ神父を匿った罪で処刑されたポルトガル人ドミンゴス・ジョルジの妻イサベラと、彼女の4歳の息子イグナシオも含まれていました。

元和大殉教図

処刑の様子は、西洋絵画を学んだ修道士によってスケッチされ、油絵として完成しました。この絵は「元和大殉教図」として知られ、ローマの教会に保管されています。この絵は、当時の凄惨な弾圧を物語る貴重な資料となっています。

その後の影響

元和の大殉教後、幕府によるキリスト教徒への弾圧はさらに厳しさを増し、凄惨なものとなっていきました。この事件は、キリスト教徒にとって非常に苦しい時代を象徴する出来事となりました。

列福

1868年、ローマ教皇ピウス9世によって、殉教した55人全員が列福されました。これは、彼らの信仰と勇気が認められたことを意味します。

主な殉教者

火刑に処された人々

カルロ・スピノラ（イエズス会司祭）
セバスチャン木村（イエズス会司祭、日本人初の司祭）
フランシスコ・デ・モラレス（ドミニコ会）
ハシント・オルファネル（ドミニコ会士）
アロンソ・デ・メーニャ（ドミニコ会）
リカルド・デ・サンタ・アナ（フランシスコ会）
村山徳安（モラレスを匿った罪）
パブロ永石
アントニオ三箇
パウロ田中
ルシア・デ・フレイタス（火刑者の中で唯一の女性）
その他、計25名

斬首された人々

マリア木村・デ・村山（村山徳安の妻）
イサベラ・ジョルジ（ポルトガル人女性）
イグナシオ・ジョルジ（イサベラの息子）
アポロニア
イグナチア
マリア棚浦
マリア秋雲
マグダレナ三箇（アントニオ三箇の夫人）
ペドロ（アントニオの息子）
カタリナ
ドミニカ
テクラ永石
クララ山田
ダミアン多田
ミゲル多田（ダミアン多田の息子）
クレメント
アントニオ（クレメントの息子）
その他、計30名

関連事項

日本二十六聖人
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江戸の大殉教

外部リンク

* 『元和大殉教』 - コトバンク

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