鈴蘭台車両基地

神戸電鉄鈴蘭台車両工場・鈴蘭台検車場

兵庫県神戸市北区鈴蘭台南町に位置する鈴蘭台車両工場と鈴蘭台検車場は、神戸電鉄が保有する総合的な車両基地です。鈴蘭台駅からは南方へ約780メートルほどの距離にあり、しばしば「鈴蘭台車両基地」とも呼ばれています。この場所は、神戸電鉄の車両の維持管理を担う中枢であるだけでなく、毎年秋に開催される人気のイベント「神鉄トレインフェスティバル」の会場としても親しまれており、その際には「鈴蘭台車庫」という略称が用いられます。

施設の歴史

鈴蘭台における車両基地の歴史は古く、原型となる施設は1928年 11月26日、当時の小部駅（現在の鈴蘭台駅）南側に工場として開設されました。しかし、開業後の車両数の増加に伴い手狭になったため、検車機能は1948年に鈴蘭台駅北側へ独立して移転し、初代の検車場が誕生しました。この検車場は1965年に火災で焼失しましたが、同地にすぐに再建され2代目として使用されました。一方、車両工場も車両増に対応するため新たな場所が求められ、1968年 10月には鈴蘭台駅と菊水山駅の間に新たな工場と検車場を建設することが決定します。そして1970年 3月31日、現在地となるこの場所に新車両工場と3代目となる検車場が完成し、これらが統合された形で今日の総合車両基地となりました。

鈴蘭台車両工場

車両工場は、車両全体の機能維持や改修といった、より重厚な作業を担う施設です。工場面積は約3,573平方メートルを有し、そのうち主工場は約2,930平方メートルを占めます。工場棟の東側には、3両を収容できる3本の工場線が設けられており、うち2本には長さ20メートルのピットが備えられています。ここでは、車両の全般検査や重要部検査をはじめ、車体の修理や車両機器の整備、さらには各種の改造作業が行われます。工場棟の西側には、天井走行クレーン2基が設置された場所があり、台車や電動機といった重要部品の整備、各種の工作や溶接作業が行われています。工場内には約60台の機械が稼働しています。

工場への入換作業には機械扱いの牽引モーターカーが使用されており、2016年からは1両が無車籍の入換機械として配置されています。工場棟の西側には、大型車両2両を一度に収容できる塗装場が設けられています。この塗装場は鉄骨造りの平屋建てで、車両の塗装作業に加え、車体工事も実施されます。塗装庫と呼ばれることもあります。塗装場の南側には車両課事務所があり、事務作業や詰所として利用されています。その他にも、車輪倉庫、工場油倉庫、予備品倉庫、工場電気室、休憩所など、工場運営に必要な設備が整っています。

鈴蘭台検車場

検車場は、日常的な車両の点検や清掃、そして列車の留置を行う施設です。検車庫は鉄骨造りの平屋建てで、面積は約1,554平方メートルです。検車庫棟内には、それぞれ6両を収容できる検車線が3本あり、各線には長さ76メートルのピットが設けられています。ここでは、列車検査や車両の状態・機能検査が実施されます。検車場には8台の機械が設置されています。

検車庫の東側には、6両編成に対応した洗車線があります。ここでは車両の車体洗浄が行われるほか、車内清掃なども実施されています。これらの清掃作業は、子会社の神鉄コミュニティサービスが担当しています。洗車線のさらに東側には広大な留置線が広がり、7〜8両編成の列車に対応しています。ここでは、通常の列車留置に加え、運用を休止している車両や、工場へ入場する車両の一時的な留置が行われます。また、鈴蘭台駅で折り返す列車が一時的に入線することもあります。留置線の合計留置能力は52両にも及びます。検車庫のすぐ西隣には検車事務所が設けられており、各種の作業拠点となっています。検車場にも、検車庫詰所、検車予備品倉庫、検車庫電気室、検車庫油倉庫、検車庫倉庫など、作業に必要な様々な設備があります。

その他の設備と特徴

鈴蘭台工場・検車場と鈴蘭台駅の間には、約780メートルの車庫線が敷設されており、工場や検車場へ出入りする列車のほか、鈴蘭台駅で折り返す列車もこの線を利用します。車両の入換時には、この車庫線に車両を縦列に停車させることもあります。留置線の北側には電気課の倉庫も設置されています。

この車両基地は、一般に公開されるイベント会場としても重要な役割を担っています。かつては工場見学会が予約制で行われていましたが、2005年からは「神鉄トレインフェスティバル」として予約制で開催されるようになり、2007年からは自由参加形式に改められました（2020年、2021年は非開催）。近年では工場だけでなく検車庫も一般公開され、多くの鉄道ファンや地域住民で賑わいます（2022年のみ再び予約制）。

また、基地内には歴史的な車両が保管されていたり、ユニークな使われ方をしていたりする例も見られます。例えば、デ101形101号は、1971年のさよなら運転後に構内入換牽引車として使用された後、2016年の新型入換モーターカー導入以降は再び工場内で保管されています。デ1100形1101号は、外部が鉄板で塞がれてマルーン色に塗られ、検車庫の移動倉庫として活用されています。さらに、検車庫棟の横にある池では、車両課の職員が鯉を飼育しているという心温まるエピソードもあります。

鈴蘭台車両工場・検車場は、神戸電鉄の安全・安定輸送を支える重要な拠点であり、同時に地域のイベント会場としても機能する、多面的な役割を持つ施設です。

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