鉄人奪還作戦

『鉄人奪還作戦』概要

『鉄人奪還作戦』は、横山光輝氏による古典的なロボット漫画『鉄人28号』を原作とし、さとうふみや氏の作画によって描かれた漫画作品です。講談社の漫画雑誌『マガジンSPECIAL』に、2006年から2009年にかけて連載されました。本作の大きな特徴は、物語の舞台が原作とは異なり、21世紀の現代に設定されている点です。これは、2005年に公開された実写映画版の時代設定に合わせたものです。

ストーリー

物語は、鉄人計画の研究が進められていた緋川研究所で発生した大規模な爆発事故から始まります。しかし、この事故は偶然によるものではなく、謎の武装組織PX団が研究中の鉄人を強奪するために偽装したものでした。この事件により、敷島博士を含む4名の研究者が消息を絶ちます。その後、行方不明となっていた研究者の一人である藤堂博士が遺体となって発見されるという衝撃的な展開を迎えます。

事態を重く見た服部警視総監は、ニューヨークで活躍する少年探偵、金田正太郎を日本へ呼び戻します。服部総監は、正太郎に対し、警視庁零課、通称「影機動隊」と協力して、PX団から鉄人を取り戻し、組織を一網打尽にするという困難な任務を命じます。

登場人物

本作には、原作でおなじみのキャラクターたちが、現代の設定に合わせてアレンジされて登場します。

金田正太郎: ニューヨーク帰りの少年探偵。探偵資格を持つ者の中では史上最年少という類まれな才能を持ちます。鉄人奪還の使命を帯びて日本に戻りました。アメリカでもPX団と渡り合っていたようです。原作そのままの格子柄ブレザーに半ズボンというクラシックな服装は、他の現代的なキャラクターと並んだ際に際立っており、一部で読者の間で話題になることもあります。父親は、本作では鉄人の開発計画には関与していません。
敷島博士: 鉄人計画において中心的な役割を担うロボット工学の第一人者。緋川研究所の爆発事故以降、行方不明となっています。彼とDr.Tは、かつて戦時中の鉄人計画に関わっていたそれぞれの祖父たちの夢を受け継ぎ、鉄人を完成させることを目指していました。
大塚署長: 正太郎とも旧知の間柄である警視庁の署長。正太郎を空港まで迎えに来ました。正太郎やギャングのリーダーである村雨龍作たちが、東京都内でマシンガンやバズーカといった重火器を駆使してPX団と激しい抗争を繰り広げる様子に、困惑し手を焼いています。
村雨龍作: 正太郎や大塚署長とも顔見知りのギャングのリーダー。原作やアニメでは物語の早い段階で死亡することが多いですが、本作では正太郎の危機を救うなど、重要な場面で活躍します。上着の中に、大塚署長から「ドラえもんのポケットか」と評されるほど、大量かつバズーカなどの大型を含む様々な重火器を隠し持っています。原作の特攻隊崩れという設定から現代に変わり、本作では明るく陽気な人物として描かれています。
村雨健次: 龍作の弟。アニメなどでは活躍の場が多いですが、本作では龍作に比重が置かれているため、出番は控えめです。原作でのワカメのような特徴的な髪型は、現代風のアレンジが加えられています。
服部警視総監: 警視総監。PX団に奪われた鉄人を取り戻すため、正太郎をニューヨークから招集し、同時に警視庁の精鋭部隊「影機動隊」に出動を要請します。
鈴子: 服部総監の秘書。アニメ第4作に登場する高見沢秘書に近い立ち位置ですが、彼女ほど冷淡な性格ではないようです。
伊賀野影人: 警視庁所属の忍者部隊「影機動隊」の第一部隊隊長。鉄人26号に襲われた正太郎と鉄雄を危機一髪で救いました。キャラクターの原案は、横山光輝氏の忍者漫画『伊賀の影丸』の主人公である影丸に由来します。
敷島鉄雄: 敷島博士の息子で、正太郎がかつて東校に在籍していた頃の友人。消息不明となった父の捜索を正太郎に依頼します。学生服（学ランに学帽）という装いが、正太郎と同様に他の登場人物と並んだ際に際立っており、読者の間で言及されるポイントとなっています。
サー・シメオン: PX団の幹部。正太郎の帰国とほぼ同時期に来日し、PX団本部から鉄人奪取の指令を受けています。
Dr.T: 鉄人の機動力を従来の20倍に引き上げる「無限動力」を開発した科学者。本名を平京興といい、かつては敷島博士に匹敵する日本のロボット工学の権威でした。物語を通して顔を覆面で隠しています。
折原さつき、十峰百合、マリ・クロロホルムといったオリジナルキャラクターも登場し、物語に彩りを添えます。

なお、単行本の巻末に収録されている4コマ漫画『鉄人○○作戦』には、『金田一少年の事件簿』シリーズから剣持勇、明智健悟、金田一一がゲスト登場しています。

登場ロボットと設定

本作には、鉄人28号のほか、鉄人27号、鉄人26号、モンスター、バッカスといったロボットが登場します。

本作における鉄人計画は、戦時中の旧日本軍が進めていた計画を、21世紀の現代日本が作業用ロボット開発計画として再利用したという独自の設定がなされています。そのため、鉄人は当初、決戦兵器としてではなく、あくまで作業用ロボットとして開発されていました。しかし、その極めて高い性能が、PX団に目を付けられることとなります。鉄人の操縦機は、原作のリモコンではなく、現代のポータブルオーディオプレーヤーのような形状で描かれています。

書誌情報

さとうふみや氏著、横山光輝氏原作の漫画『鉄人奪還作戦』は、講談社よりKCデラックスレーベルで単行本が刊行されています（既刊3巻、2022年12月現在）。

ISBN情報は以下の通りです：
第1巻: 978-4-06-372252-9 (2007年1月12日発売)
第2巻: 978-4-06-375617-3 (2008年12月17日発売)
* 第3巻: 978-4-06-375676-0 (2009年3月17日発売)

『鉄人28号』の世界観を現代に置き換え、少年探偵と巨大ロボット、そして悪の組織との攻防を描いた意欲的なリメイク作品と言えるでしょう。

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