鉄道教習所

鉄道教習所：鉄道員の育成機関の歴史

鉄道教習所は、明治時代から太平洋戦争後にかけて、鉄道院、鉄道省、運輸通信省、日本国有[[鉄道]]（国鉄）といった組織が運営した職員養成機関です。単なる研修施設とは異なり、旧制中学校卒業程度の学力を持つ人々を選抜し、旧制専門学校に相当する教育を行う機関としての側面も持っていました。

歴史

鉄道教習所は、その設立から終焉まで、時代の変化とともに様々な変遷を遂げました。

1909年（明治42年）：鉄道院が中央教習所と地方教習所を設置。
1921年（大正9年）：鉄道省の発足に伴い、鉄道省教習所（省教）と鉄道局教習所（局教）に改組。
1949年（昭和24年）：日本国有[[鉄道]]（国鉄）の発足により、鉄道管理局の配下へ。
1965年（昭和40年）：鉄道学園に改組。

鉄道院職員教習所時代

1909年（明治42年）、鉄道院初代総裁の後藤新平は、各鉄道管理局（東部・中部・西部・九州・北海道）に鉄道院職員地方教習所を、東京には鉄道院職員中央教習所を設置しました。入所資格は部内職員に限られ、技術習得だけでなく人格修養も重視されました。

地方教習所（地教）では、所属長の推薦のみで選抜が行われ、学科試験は行われませんでした。業務科（駅務系統）と運転科（運転系統）の2学科体制が基本で、車両、保線、法規、信号保安、列車運転計画、交通地理、計理、統計といった鉄道業務に関する科目の他、精神講話、数学、英語などの普通科目も教えられました。

中央教習所（中教）には、普通科（甲部＝業務、乙部＝運転の2部制）、英語科、特科の3学科が設置されました。特科・英語科の卒業生には4年間の奉職義務がありました。普通科は官公立中学校卒業程度の学力を持つ者、または地教修了後に現場で成績優秀な者が所属長の推薦によって選抜され入所しました。

鉄道省教習所時代

1922年（大正11年）、鉄道50年祝典記念事業の一環として、鉄道教習所は大幅に拡充されました。中央教習所は「鉄道省教習所（省教）」と改称され、旧制専門学校に相当する普通部（業務科、機械科、土木科、電気科）が東京に設置されました。旧制中学校卒業程度の入学試験合格者に対して2年間の修学年限が設けられ、卒業生は省内において旧制専門学校卒業者と同格の待遇を受けました。

省教にはさらに、旧制大学に相当する修学年限2年の「高等部（行政科、機械科、土木科、電気科）」が置かれました。高等部の卒業生も同様に、省内において旧制大学卒業生と同格の待遇を受けました。これらの学科では職能教育だけでなく普通教育にも重点が置かれ、省教普通部は旧制中学校卒業者にとって難関の受験先となりました。

鉄道局教習所時代

1922年（大正11年）の省教設置と同時に、局教は鉄道局教習所に改められ、鉄道局ごとに札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、門司の6箇所に設置されました。設置学科は鉄道局によって異なり、専門部（東京鉄道局教習所のみ）と専修部が設けられました。

鉄道教習所（戦時体制下）

1939年（昭和14年）、鉄道教習所官制により、教習所制度は拡大し、鉄道省大臣官房直属の官立学校となりました。東京、大阪、名古屋、門司、仙台、札幌の教習所に普通部が復活し、専修部も拡大されました。1940年（昭和15年）には全鉄道教習所が青年学校の課程と同等以上に認定され、東京鉄道局教習所専門部では徴兵猶予が認められました。

終焉とその後

正式な学校となった鉄道教習所でしたが、1948年（昭和23年）に連合軍総司令部（GHQ）から教育内容に関する覚書が提出され、教育は実務中心へと転換しました。1949年（昭和24年）には学校教育的色彩の強い中等部、専門部は廃止され、代わりに鉄道教育、職能教育に向けた専攻部、高等部、普通部が設けられました。

1965年（昭和40年）9月1日、鉄道教習所は鉄道学園に改称され、全国各地の技能者養成所も統合されました。国鉄分割民営化後は、JR各社の社員研修センターとして、その役割は引き継がれています。

著名な出身者

鉄道教習所からは、様々な分野で活躍する人材が輩出されました。

田中菊雄（英語学者）
野中広務（政治家）
佐藤忠男（映画評論家）
金子満広（政治家）

まとめ

鉄道教習所は、日本の鉄道発展に貢献した人材育成の重要な機関でした。その教育内容は時代とともに変化しましたが、鉄道員の育成という使命は、現在のJR各社の研修センターへと受け継がれています。

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