鉄道総研クヤ497形電車

クヤ497形電車について

クヤ497形電車は、かつて鉄道総合技術研究所（鉄道総研）で使用されていた特殊な試験車両です。この車両は、特に摩擦係数（粘着係数）を測定するために設計されたもので、1987年に改造が行われ、荷物電車のクモニ83形を基に製作されました。鉄道総研はこの独自の試験車両を所有し、機関車や電車の牽引力向上や安全性向上に必要なデータの収集を目指しました。

構造と用途

クヤ497形は、レールと車輪の摩擦係数を安定的に測定するための専用設備が備わっています。これまでの方法では、台車に水を撒くことで摩擦を測定していましたが、自然条件に影響を受けやすく、連続したデータの収集が難しい状況でした。そこで国鉄技術研究所は、世界初の粘着試験専用台車であるすべり粘着試験台車（TR910）を開発し、この試験車両に組み込むことで、信頼性の高いデータ収集を可能にしました。

改造の経緯

クヤ497形のルーツは1948年に新造されたモハ63738にさかのぼります。その後、1952年、1966年にかけてさまざまな改造が施され、最終的に1987年にクヤ497-1として生まれ変わりました。この改造により、クヤ497形は試験列車の先頭車両としても使用できるようになり、様々な路線で自由に運行できる設計とされました。

連結システムと電源供給

非電化区間での測定を実現するため、クヤ497形は双頭連結器を装備し、気動車や機関車との連結が可能です。さらに、電源が確保できない場所でも使用できるよう、ディーゼル発電機を床下に設置。直流電化区間では屋根上のパンタグラフを通じて電源を得る仕組みになっています。

設備と性能

この試験車両には、特急形電車でも用いられる分散式の冷房装置が2基設置されています。また、元々低屋根構造を持つクモニ83形800番台を基にしているため、狭小トンネル区間の通過も可能という利点があります。試験に使用されている台車は片側がすべり粘着試験用のTR910形であり、もう一方は国鉄101系電車の廃車品であるDT21T形です。

使用の終了

クヤ497形は1996年に本線車両としての登録が抹消されましたが、その後も鉄道総研での様々な試験に用いられていました。特に、フリーゲージトレインの試験などに活用されていました。しかし、次第に新しい試験車の導入が進み、保管場所がなくなったため、最終的には解体されてしまいました。

このように、クヤ497形電車は、鉄道技術の進歩に重ねて貢献した貴重な試験車両として記憶に残っています。

もう一度検索