銀世界の追跡

『銀世界の追跡』：トムとジェリーによる雪上と南国の珍道中

1966年、チャック・ジョーンズ監督の手によって生み出されたトムとジェリーの名作短編アニメーション『銀世界の追跡』(原題:The A-Tom-Inable Snowman)は、予測不能な展開と笑いを誘うシチュエーションで彩られた、忘れがたい作品です。

物語は、冬山の山小屋から始まります。トムはジェリーを捕まえ、料理しようと企みますが、ジェリーの機転とトムのドジによって、雪上での激しい追いかけっこへと発展します。まるでスピードスキーさながらの、雪煙を上げる二人の攻防は手に汗握る展開です。

逃げ込んだジェリーは、山岳救助隊の本部という、思わぬ場所にたどり着きます。そこには巨大なセントバーナード犬がいて、ジェリーは犬の温かい体で眠りにつきます。トムは、ジェリーを手に入れるため、大胆な策略に出ます。スキー板を雪に埋め込み、「スキー事故」を偽装し、救助隊を呼び出したのです。

しかし、この作戦は思わぬ方向へ。トムはジェリーを追いかけるうちに崖から転落し、粉々に砕けてしまいます。しかし、心配ご無用。救助隊のセントバーナード犬が樽からブランデーを取り出し、トムに注ぎかけると、彼は見事に復活を果たすのです。

泥酔したトムは、凍った湖上でジェリーを追い詰めます。しかし、酔いによって視界はふらつき、氷の穴に落ちてしまうというハプニング。再びセントバーナード犬に救助されるという、まさにジェットコースターのような展開です。

風邪をひいたトムは、山小屋の風呂桶の中で震えながら、それでもジェリーを捕まえようと悪知恵を働かせます。しかし、セントバーナード犬が熱湯を注いできたために、その計画は水の泡となります。

舞台は一転、南国の島へ。トムはついにジェリーを捕まえ、バーベキューしようとしますが、炎で縄が焼け切り、ジェリーは脱出。トムはココナッツの実に頭を打たれて気絶してしまいます。そこへ、またしてもセントバーナード犬が登場し、トムを介抱するのです。

この作品の見どころは、予測不能な展開だけではありません。オープニングでは、トムとジェリーがスキーで追いかけっこをする様子がタイトルと共に表示され、エンディングでは水平線から昇る太陽の中に「THE END」の文字が描かれるなど、独創的な演出も魅力の一つです。

トムとジェリー、そして頼りになる（？）セントバーナード犬。個性豊かなキャラクターたちが織りなす、笑いとスリルに満ちた物語は、何度観ても飽きることがありません。日本のテレビでも放送され、DVDにも収録されている『銀世界の追跡』。ぜひ、この傑作を堪能してみてください。

スタッフ

監督：エイブ・レヴァイトー
製作：チャック・ジョーンズ、レス・ゴールドマン
製作補助：アール・ジョーナス
アニメーション製作：ケン・ハリス、ドン・タウスリー、トム・レイ、ディック・トンプソン、ベン・ワーシャム、フィリップ・ローマン
脚本：ボブ・オーグル
レイアウト：ロバート・ギブンス
背景画：ロバート・インマン
デザイン：モーリス・ノーブル
音楽：ディーン・エリオット
声優：メル・ブランク、ジューン・フォーレイ

登場キャラクター

トム：ジェリーを捕まえようと躍起になるが、いつもセントバーナード犬に邪魔をされる猫
ジェリー：トムから逃げ回り、機転を利かせて危機を脱するネズミ
* セントバーナード犬：山岳救助隊の犬で、トムの行動を邪魔する、物語のキーパーソン

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