銀二郎の片腕

銀二郎の片腕

『銀二郎の片腕』は、里見弴によって書かれた小説であり、1917年に文芸雑誌『新小説』で発表されました。この作品は、素封家である中戸川吉二の体験談を基に創作されたと言われています。特に、銀二郎が茶碗を井戸に漬ける場面は、吉二が実際に目撃した出来事から着想を得ています。また、主人公が自らの腕を切断するという劇的な行為は、トルストイの晩年の作品「パアテル・セルギウス」における指を切る場面から影響を受けています。

あらすじ

物語の舞台は、一年の半分が雪に閉ざされる地方の牧場です。そこで働く牧夫、銀二郎は、牧場の女主人に強い敬愛の念を抱いています。しかし、ある冬の日、銀二郎は女主人がある行為を目撃してしまいます。口止めされた銀二郎は、女主人の嘘を知り、深い幻滅を覚えます。しかし、介抱されたり、夏の快活な姿を見せる女主人の姿が、銀二郎をより深い愛に誘い込みます。その年の冬、舅の隠居所の落成祝いの席で、銀二郎は女主人の嘘に怒りを爆発させ、自らの片腕を切り落として投げつけ、牧場を去ります。彼のその後を知る者はいません。

登場人物

銀二郎: 四十歳前後の牧夫。潔癖症で、それゆえに職を転々としてきた過去を持ちます。女主人のことを深く敬愛しています。
女主人: 四十一歳。夫を亡くし、牧場の主として男のように振る舞っています。銀二郎の能力を高く評価しています。東京に憧れを抱いています。
舅: 歩行が困難で、女主人の世話を受けています。
房州: 牧場で最も年長の人物です。

映画

1953年には、新東宝によって映画化されました。

銀二郎: 藤田進
女主人: 木暮実千代
房州: 林幹
監督: 青柳信雄

テレビドラマ

1968年には、毎日放送でテレビドラマ化もされています。

* 銀二郎: 山﨑努

『銀二郎の片腕』は、愛と憎しみ、人間の心の葛藤を描いた作品として、今もなお多くの読者を魅了し続けています。

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