銀円券

銀円券とは

銀円券は、1949年7月に中華民国政府が中国大陸で発行を開始した通貨です。当時の中国は国共内戦の真っ只中にあり、国民党の支配地域は限定的でした。この状況下で、銀本位制に基づいた銀円を基盤とし、紙切れ同然となっていた金円券に代わる通貨として導入されました。しかし、その流通範囲は限られ、インフレによる価値の低下によって、短期間でその役割を終えることになります。

銀円券発行の経緯

1949年4月から5月にかけて、南京と上海が人民解放軍によって占拠され、国民党政府は広州へ移動しました。そこで、新たな通貨として銀円券の発行が計画されます。5月7日には、広州市政府が銀円による徴税を行うと発表。当時、流通していた金円券は価値を失っており、民間では銀円や外貨による取引、または物々交換が主流となっていました。

7月4日、行政院は「銀円及び銀円兌換券発行弁法」を発表。銀本位制の復活と、政府取引も銀円または銀円券で行うことを決定しました。銀円券1元は銀円1円（銀23.493448g相当）と無制限に交換可能とし、金円券との交換比率は銀円券1元=金円券5億元と定め、9月1日までに切り替えを行うとしました。発行当初は、額面1、5、10、50、100元の銀円券が発行され、7月8日には重慶でも発行が開始されました。

銀円券の終焉

国民党政府は、過去に法幣や金円券で価値が暴落した経験があり、国共内戦の緊迫化の中で銀円との無制限兌換を保証したものの、銀円券もまた価値暴落の運命から逃れることはできませんでした。7月17日、中国共産党が新華社通信を通じて、西南地区解放後に銀円の兌換は認めるが銀円券の兌換は認めないと発表したことで、広州における香港ドルとの為替レートが暴落しました。広州政府は外貨の流通を禁止しましたが、効果はなく、銀円券を銀円に交換しようとする動きが広がり、銀行は銀準備量が不足し、8月には交換額に上限を設ける事態となりました。この交換制限の発表は、民衆の銀円券に対する信頼を失わせ、価値は急速に下落しました。

1949年後半には、広州および西南地区が共産党によって占拠され、銀円券の流通は事実上停止することになりました。銀円券は短期間でその役割を終え、中国大陸では人民元が新たな通貨として定着することになりました。

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