法幣

法幣の歴史とその影響

法幣（ほうへい）は、1935年11月3日に中華民国の国民政府によって導入された不換紙幣であり、中国の法定貨幣として流通しました。この貨幣の発行により、500年続いた銀本位制が終焉を迎えましたが、急激な発行によってハイパーインフレを引き起こす結果となります。

法幣の発行までの背景

d.辛亥革命により中華民国が成立した際、通貨としては清代に続く銀本位制が継承されていました。清末の銀円の流入により民間でも銀円が流通し、さらに民国初期には各地方銀行や政府が独自に紙幣を発行していましたが、その信用や価値は地域ごとに異なっていました。

国民政府は1927年の北伐により中国を統一し、その後の貨幣改革を進める中で、銀本位制を維持することが困難になってきました。特に、1929年にアメリカで発生した世界大恐慌では、銀が大量に流出し、急速にデフレと金利上昇を招きました。この状況を受け、1935年11月4日に政府は紙幣の使用を強制し、銀の国有化を定める政策を実施しました。

法幣の発行と運用

法幣は、中央銀行及び中国、交通、さらに1936年からは農民銀行を通じて発行されました。法幣の導入により、銀円との等価交換がなされ、法定通貨としての地位が確立されました。しかし、この政策はすぐに混乱を引き起こし、特に農民層では現実の流通通貨と異なる法幣への不安が広がりました。また、銀を保有していた銀行も強制的に没収されるなど、経済的不安が広がりました。

1938年には、国民政府が外為や為替の管理を進める中で、法幣の価値は下落し続けましたが、他国からの借款を受けて何とかその信用を維持しようとしました。日中戦争が始まると、日本は占領地で法幣を回収し、経済を破壊しようとしました。

日中戦争と法幣の崩壊

日中戦争が勃発する以前、法幣の発行高は14億4,400元でありましたが、戦争による経済的困難が続く中で、法幣が大量発行される事態となります。結果として、1945年の終戦時にはその発行量は5,569億元、つまり戦前の400倍に達しました。国民党政府は内戦の資金調達のためにさらなる発行を行い、最終的に1948年8月には604兆元に達しました。これにより、スーパーインフレが起こり、法幣の価値は失われ、製紙会社の原料に使用される事態に至りました。

結論

法幣の導入は、中国の金融システムにおいて重要な転換点となりましたが、急激な発行と社会的混乱によりその信用は急速に失われました。法幣の発行は、国家の信用が通貨の価値を支えるという不換紙幣の特性を示しつつも、結果として経済的な困難を引き起こすこととなりました。1948年には新たに金円券が発行され、法幣はその役目を終えることになりました。法幣の歴史は、政府が通貨政策を如何に展開し、またそれが社会経済にどのような影響を与えるかを考えさせる貴重なデータを提供しています。

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