銀座ACB

銀座ACBの歴史とその影響

銀座ACB（ぎんざアシベ）は、東京都中央区の銀座7丁目に位置し、1957年から1972年まで営業していたジャズ喫茶です。創業者である谷富次郎氏は、満州国からの引揚者であり、1957年に妻の谷和子と共に料亭「アシベ」を開業しました。この料亭は、政治家や実業家たちに愛され、特に和子の人柄が多くの人々を惹きつけていました。

谷氏は、東京ガスの社長である安西浩氏の支援を受け、安西が経営する東京ガス本社の地下にジャズ喫茶を開店することになりました。銀座ACBは、およそ300席を設け、中央に高い迫りによる回転ステージを備えるなど、当時国内最大規模のジャズ喫茶として知られていました。当初は客足が伸び悩んでいましたが、平尾昌晃、ミッキー・カーチス、山下敬二郎などのロカビリーブームの影響を受け、女学生たちが長い行列を作るに至りました。

銀座ACBは、当時学生だった橋幸夫や大宅映子といった著名人の常連客をも迎え、彼らは主に演奏を楽しむために訪れていました。そのため、店のメニューはアイスコーヒーのみというシンプルなものでした。1960年のクリスマス・イブには、平尾昌晃の誕生日を祝う客が多く集まり、混雑のあまり女子高生数名が負傷するという事故も起きました。

ロカビリーブームのその後も、森山加代子や坂本九、橋幸夫、ザ・スパイダース、ヴィレッジ・シンガーズ、ザ・ジャガーズなどの著名なアーティストたちが舞台に立ち、変わらぬ人気を誇っていました。しかし、テレビ時代の到来やグループサウンズ（GS）ブームの終焉に伴い、1969年秋以降その人気は急速に衰え、1972年に閉店を迎えることになりました。

また、谷富次郎氏は、他の芸能プロダクションである東洋企画を設立しましたが、役員間の対立から堀威夫氏を追放する事態となりました。堀氏が手掛けたバンドメンバーが後に設立したのが、現在でも有名な芸能プロダクション「ホリプロ」です。東洋企画の二代目社長には岐部一夫氏が就任しました。

新宿ACBの展開

銀座ACBの成功の後、同じ資本によって新宿でも「新宿ACB」が開店されました。新宿のACBは、甲州街道と明治通りの交差点に位置し、1960年にオーナーが変更され独立を果たしました。その後、1968年には「新宿アシベ会館」と改名し「音楽劇場新宿ニューアシベ」として営業を開始しました。これ以降も経営の母体が変わりながら続けられ、現在ではライブハウス「新宿ACBホール」としてその名を知られています。

銀座ACBの歴史は、ジャズという音楽ジャンルの発展だけでなく、多くの文化的な影響を及ぼした場所として今なお人々に語り継がれています。

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