銚子口信号場

銚子口信号場とは

銚子口信号場は、北海道亀田郡七飯町字東大沼に所在する北海道旅客鉄道（JR北海道）函館本線（通称：砂原支線）に設置された信号場です。列車の行き違いや待ち合わせのために使用されており、電報略号は「シク」が用いられています。かつては旅客営業を行う「銚子口駅」として機能しており、旅客駅時代の駅番号はN69でした。

歴史

この場所が鉄道駅としてその歴史をスタートさせたのは、1945年（昭和20年）6月1日のことです。国有鉄道函館本線の砂原線（大沼駅 - 渡島砂原駅間）が開通したのに伴い、一般駅として開業しました。開業当初、駅の周囲は雑木林を切り開いた場所であり、駅前には鉄道職員の官舎がある程度で、一般の民家は存在しませんでした。

しかし、開業から数年後の1948年（昭和23年）1月16日、大きな変化が訪れます。かつて存在した大沼電鉄が、この銚子口駅前に「新銚子口駅」を新たに設置し、同駅から鹿部温泉駅（後の鹿部駅とは別駅）までの営業を再開したのです。これにより、銚子口駅はJR線と大沼電鉄の乗り換え地点として、多くの旅客で賑わいを見せるようになり、駅前にも数軒の民家が建てられるようになりました。なお、戦前に一時休止となる前の大沼電鉄には、同じ「銚子口駅」を名乗る駅が存在しましたが、この戦後開設された新銚子口駅は、それとは異なる場所に位置していました。

1949年（昭和24年）6月1日には、日本国有鉄道法の施行により、駅の運営は日本国有鉄道（国鉄）に引き継がれました。しかし、大沼電鉄との連携による賑わいは長くは続きませんでした。大沼電鉄線はわずか4年後の1952年（昭和27年）12月25日に全線が廃止され、新銚子口駅も廃止されました。これにより、銚子口駅の乗降客は大きく減少しました。

その後、国鉄の合理化が進められ、1960年（昭和35年）5月20日には貨物扱いが廃止され、1971年（昭和46年）10月26日には荷物扱いも廃止されるとともに、駅は無人化されました（簡易委託駅として一部業務は継続）。1987年（昭和62年）4月1日には、国鉄の分割民営化に伴い、北海道旅客鉄道（JR北海道）の駅となりました。1988年（昭和63年）3月には駅舎が改築されましたが、1992年（平成4年）には簡易委託も終了し、完全な無人駅となりました。

利用客の減少傾向は止まらず、近年、JR北海道は利用状況の厳しい駅の見直しを進めます。2020年（令和2年）以降、七飯町に対し、当駅を含む複数駅の今後について協議が行われました。その結果、地域による維持管理は困難であるとの判断から、駅を廃止する方向で調整が進められました。そして、2022年（令和4年）3月12日のダイヤ改正をもって、銚子口駅は旅客営業を終了し、現在の銚子口信号場として再スタートを切ることになりました。

構造

現在の銚子口信号場は、列車交換のための2線を持つ構造となっています。かつて旅客駅として機能していた頃は、大沼駅が管理する無人駅でした。駅舎は線路の東側に位置し、上り線ホームの中央部分に接していました。上下線それぞれのホーム間は、駅舎側のホーム中央部と反対側のホーム中央部とを結ぶ構内踏切によって連絡されていました。明確な番線表示はありませんでしたが、駅舎に近い東側が上り線、反対側が下り線として使用されていました。また、上下線ともに安全側線が設けられていました。転轍機は、上り線から二方向に分岐する形（方開き分岐）となっていました。旅客駅時代の駅舎は一度改築されており、外壁にはサイディングが張られ、建物の規模に対して軒が高い特徴的なデザインでした。駅舎内にはトイレも設置されていました。

名称の由来

「銚子口」という名称は、この地域の集落名に由来しています。大沼が北東方向へと細く伸びていく地形が、日本酒などを注ぐ際に使われる「銚子」の形に似ていることから名付けられたと伝えられています。

駅周辺

信号場周辺には、現在も民家が点在しています。近くには北海道道43号大沼公園鹿部線が通っており、沿道には東大沼温泉やホテルユートピア大沼などの宿泊・保養施設、大沼高原教会、東大沼多目的グラウンド「トルナーレ」などがあります。路線バスを利用する場合は、道道沿いの函館バス「駒見」停留所が最寄りとなります。かつて、このJR駅前に大沼電鉄の「新銚子口駅」が存在していました。

かつての大沼電鉄 新銚子口駅

銚子口信号場の歴史と関わりの深い駅として、大沼電鉄の「新銚子口駅」があります。この駅は、1948年（昭和23年）1月16日に大沼電鉄線が戦後営業を再開した際に開設され、その場所はまさに国鉄銚子口駅の目の前でした。大沼電鉄線は、当駅と鹿部温泉駅の間を結んでいましたが、わずか数年後の1952年（昭和27年）12月25日に全線が廃止され、新銚子口駅も廃駅となりました。

駅の跡地については、1999年（平成11年）や2010年（平成22年）の調査時点では、JR銚子口駅前の空き地として確認されています。駅の鹿部方面へ向かう線路跡の一部は、沼尻川に至る地点までが住宅地に続く舗装された道路として利用されています。また、1945年（昭和20年）に廃止された大沼電鉄の旧線跡と、戦後復活した新線跡が合流する沼尻川付近には、当時の築堤や橋台の一部が現在も残存していることが確認されています。

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