銭惟演

銭惟演（せん いえん）：北宋の政治家・詩人

銭惟演（977年 - 1034年）は、北宋時代の政治家、詩人であり、字は希聖（きせい）。杭州臨安県の出身です。

生涯

呉越の最後の国王、銭弘俶（せん こうしゅく）の十四男として生まれました。978年、父が宋の太宗に国土を献上したことで呉越は滅亡。銭弘俶は淮南国王に封じられ、銭惟演は団練副使・右屯衛将軍の官位を与えられました。

1000年、真宗に『咸平聖政録』を献上し、その文才を認められて太僕少卿に任じられます。その後は文人官僚として才能を発揮し、『冊府元亀』の編纂にも参加しました。1008年には知制誥、1018年には翰林学士となっています。

政治面では、妹を真宗の皇后である劉氏の義兄、劉美（龔美）に嫁がせて姻戚関係を結び、丁謂（ていい）と協力して寇準（こうじゅん）を攻撃しました。寇準が左遷され、仁宗が即位すると、宰相丁謂の下で枢密副使を務めますが、丁謂が失脚すると、今度は丁謂を非難して自身の保身を図りました。

幼い仁宗を擁立し、垂簾聴政を行った劉太后の姻戚であったことから、枢密使・同平章事にまで昇りつめますが、西京留守に任じられ洛陽へ転出。1033年に劉太后が亡くなると後ろ盾を失い、弾劾を受けて随州に左遷され、ほどなくして亡くなりました。

諡は当初「文墨」とされましたが、遺族の抗議により「思」に改められました。後に「文僖」と再度改められています。

銭惟演の子孫は代々宋朝の高官として重んじられ、六世の孫である銭象祖（せん しょうそ）は南宋中期に寧宗の左丞相を務めています。

詩人として

銭惟演は楊億（ようおく）、劉筠（りゅういん）と共に『西崑酬唱集』に参加した西崑派の中心人物でした。晩年は後進の育成に力を入れ、河南府の主簿に過ぎなかった梅堯臣（ばいぎょうしん）の詩才を高く評価し、「忘年の交わり」を結びました。洛陽時代の幕下には欧陽脩（おうようしゅう）、謝絳（しゃこう）、尹洙（いんしゅ）、富弼（ふひつ）らがいます。

参考文献

池澤滋子『呉越銭氏文人群体研究』（2006年、上海人民出版社）

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