銭瓶町ビルディング

銭瓶町ビルディングは、東京都千代田区大手町二丁目に位置する建築物です。「TOKYO TORCH」と称される常盤橋街区の再開発プロジェクトにおいて、「下水道局棟（D棟）」として計画、建設されました。

かつて大手町や丸の内エリアから発生する汚水を処理施設へ送る役割を担っていた銭瓶町ポンプ所は、日本ビルヂング内に設置され、半世紀以上にわたり稼働を続けていました。しかし、設備の老朽化が進み更新が必要となったものの、民間との合築ビルである日本ビルヂングの一部のみを改修することは困難でした。さらに、周辺地域には商業施設や公共施設が密集しており、ポンプ所の機能を停止せずに新たな施設を建設するための用地確保が物理的に難しいという課題がありました。こうした状況を打開するため、東京都下水道局は「大手町連鎖型都市再生プロジェクト」に地権者として参加し、その第4次事業である「TOKYO TORCH」計画の中で、新たなポンプ所の設置場所として当ビルが建設されることになったのです。

本ビルは2022年3月末に竣工後、東京都下水道局へ引き渡され、同年4月中旬に旧施設から新しいポンプ所への送水設備切り替えが行われました。その後、7月には中部下水道事務所や東京都下水道サービス本社が、8月には下水道メンテナンス協同組合事務局がそれぞれ移転しました。ビルの完成に合わせ、同年8月2日には1階の多目的スペース「ぜにがめプレイス」も一般向けにオープンしています。

ビルの構成は、地下3階から地上3階にかけて東京都下水道局の銭瓶町ポンプ所が核となります。地上1階には「ぜにがめプレイス」という多目的空間が設けられ、地上4階から8階には東京都下水道局中部下水道事務所をはじめ、東京都下水道サービス本社、下水道メンテナンス協同組合事務局など、下水道関連の様々な組織が入居しています。

ぜにがめプレイスは、地域特産品の販売や下水道に関する情報発信、カフェスペースを併設する複合施設です。特に、全国47都道府県の特産品を学生が運営するセレクトショップ「アナザー・ジャパン」の店舗としての機能も持っています。

新たなポンプ所を既存機能の停止なく建設するため、隣接していた日本ビルヂングのうち、かつて「第三大手町ビルヂング」として竣工した部分のみを解体し、その跡地に建設するという特殊な手法が採用されました。建物全体としては、コーナー部分が丸みを帯びた、印象的なフォルムが特徴です。低層部は明治・大正期の下水道施設を想起させる煉瓦積みのような表現でアイデンティティを示し、搬入口や換気口なども整然と配置して圧迫感を和らげています。高層部は熱負荷が大きいコーナー部へ庇の出を変化させ、省エネルギーと豊かなファサードデザインを両立しています。また、向かい合う常盤橋公園との連続性を意識し、外構部や2階、屋上テラスには積極的に植栽が配置され、「緑のネットワーク」を形成しています。特に2階と屋上の庇軒天には鏡面仕上げのアルミパネルが採用され、通りから見上げた際に緑が反射して映り込み、豊かな緑の空間が感じられるよう工夫されています。

地下1階では常盤橋タワーおよび鉄鋼ビルディング、地下2階では地下鉄大手町駅コンコースと接続し、周辺施設や交通網との連携が図られています。

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