鋤鼻器

鋤鼻器（じょびき）

鋤鼻器は四肢動物における特有の嗅覚器官であり、英語では「vomeronasal organ」と呼ばれています。この器官は嗅上皮と異なる経路を持ち、嗅覚情報を脳に送ります。別名「ヤコブソン器官」とも称され、位置は生物によって異なり、鼻腔内や口蓋に開口しています。

進化とその機能

鋤鼻器は最初に嗅覚を提供する器官として機能し、初めは口腔内に存在する食物の匂いを感知していたと考えられています。嗅覚器官としての役割は進化の過程で変化し、脳の副次臭葉に接続される神経経路を通じて信号を送ります。ここでは、643種の動物における鋤鼻器の進化の過程を見ていきます。

両生類

鋤鼻器は両生類の中で最初に現れたとされています。有尾目では外鼻孔から内鼻孔へと続く鼻嚢に走る溝として現れ、原始的な形状を示しています。無尾目や無足目の両生類でも、この溝は鼻腔に開口する盲嚢に変化します。両生類の内鼻孔は口蓋に接続されているため、口腔内の匂いを感知する能力を持っています。

爬虫類

現生の爬虫類にはいくつかの目がありますが、カメ目やワニ目では鋤鼻器がほとんど消失しています。ムカシトカゲ目では内鼻孔に開口する盲嚢として残っています。一方、有鱗目では鋤鼻器が非常に発達しており、嗅上皮よりも重要な嗅覚器官となっています。この鋤鼻器は鼻腔とは無関係で、口蓋部にだけ開口しています。特にヘビや一部のトカゲは、二叉に分かれた舌を活用して化学物質を鋤鼻器に取り入れるために頻繁に舌を出し入れします。

鳥類

飛行能力を持つ鳥類では、高度な視覚や聴覚が発達しているため、嗅覚はあまり重視されていません。その結果、鳥類における鋤鼻器はほとんど消失しているか、形跡をとどめているのみです。

哺乳類

哺乳類においては、ヒトや一部のコウモリ、水棲哺乳類を除くほとんどの群に鋤鼻器が存在し、鼻中隔の前下部に位置しています。機能としては、一般的な嗅覚ではなく、フェロモンに特化した受容器官と考えられています。多くの齧歯類では鋤鼻器の開口部が鼻腔にありますが、他の哺乳類では鼻口蓋管を通じて口蓋部に開口します。また、犬や馬などの動物が空気中のフェロモンを取り入れる際、フレーメン反応と呼ばれる特異な表情を見せることが知られています。

関連項目

• - 嗅覚
• - フレーメン反応

参考文献

• - 日本獣医解剖学会編纂『獣医組織学 改訂第二版』学窓社 2003年
• - 獣医学大辞典編集委員会編『明解獣医学辞典』チクサン出版 1991年
• - A.S.ローマー, T.S.パーソンズ『脊椎動物のからだ その比較解剖学』法政大学出版局 1983年
• - 疋田努『爬虫類の進化』東京大学出版会 2002年

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