錦織登美夫

錦織登美夫：教育出版に生涯を捧げた実業家

錦織登美夫（にしきおり とみお、1919年11月3日 - 2008年1月22日）は、日本の出版界において、特に教育書出版に多大な貢献をした人物です。東洋館出版社の創業者であり、初代社長として、戦後の教育復興期から日本の教育を支える出版活動を展開しました。

生い立ちと学歴

錦織登美夫は、1919年に新潟県中蒲原郡新津町（現在の新潟市秋葉区）で、東洋館書店・東洋館印刷所を経営する錦織豊松の長男として生まれました。祖父である錦織良平が創業した印刷所を受け継ぐ家系に育ち、幼い頃から出版・印刷業界に触れる機会が多くありました。

1937年3月に新潟中学校を卒業後、慶應義塾大学に進学。1940年3月には同大学予科経済学部を修了し、1942年9月には経済学部を半年繰り上げ卒業しました。学業優秀であったことが伺えます。

戦争とシベリア抑留

大学卒業後、第二次世界大戦に兵士として従軍。終戦後にはシベリアに抑留されるという苦難を経験しました。1948年に帰還するまでの数年間は、厳しい環境下での生活を余儀なくされました。

東洋館出版社の設立と教育書への注力

シベリア抑留からの帰還後、1948年6月に東洋館出版社を設立し、社長に就任しました。戦後の混乱期において、教育の重要性を強く認識し、教員向けの指導書をはじめとする教科教育分野の教育書出版に力を注ぎました。東洋館出版社は、教育現場のニーズに応える質の高い教材を提供することで、日本の教育水準の向上に大きく貢献しました。

社長退任後は会長に就任し、後進の育成にも尽力しました。

その他の役職

出版業界における活動以外にも、千代田製帽監査役、牧書店社長、教育書協会幹事長（代表）、東洋館印刷所専務取締役・社長など、多岐にわたる役職を歴任しました。これらの役職を通じて、出版・印刷業界の発展に貢献するとともに、地域社会の活性化にも尽力しました。

死去

2008年1月22日、肺炎のため88歳で死去しました。葬儀・告別式は、東京都台東区上野公園の寛永寺輪王殿で執り行われました。

家族

錦織家は、出版・印刷業界において重要な役割を果たした一族です。祖父の錦織良平は東洋館印刷所の創業者であり、父の錦織豊松は2代目社長を務めました。長男の錦織与志二は東洋館出版社の2代目社長、男孫の錦織圭之介は3代目社長として、その精神を受け継いでいます。

また、俳優の井浦新と鈴木一真は、錦織圭之介の義理の弟にあたります。

錦織登美夫の功績

錦織登美夫は、戦後の日本の教育復興期において、教育書出版を通じて教育の発展に大きく貢献しました。東洋館出版社を設立し、教科教育分野の質の高い教材を提供することで、教育現場を支援しました。また、出版業界の発展や地域社会の活性化にも尽力し、多岐にわたる分野でその才能を発揮しました。その功績は、後世に語り継がれることでしょう。

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