鍛冶

鍛冶（かじ、たんや）

鍛冶とは、金属を鍛えたり加工することを行い、様々な製品を生み出す技術や職人を指します。言葉の由来は「金打ち」で、「かぬち」「かんぢ」「かじ」などの変遷を辿りながら、現代に至るまで多様な形で使われています。鍛冶に携わる職人は、「鍛冶屋」と呼ばれ、特に刀剣を製作する職人は「刀鍛冶」や「刀工」と称されます。

歴史

日本の鍛冶の起源は、古代にさかのぼります。大化の改新の前後、鍛冶に従事する集団を「鍛冶部」と言い、忍海漢人などの渡来人が鍛冶技術を持っていたことも記録されています。古代の鉄器は「浸炭鍛造」技術を用いて作られ、鋼と錬鉄の違いは明確ではありませんでした。この時代、鉄は非常に貴重な資源であり、その保有は限られた階層にとどまっていました。

時代が進むにつれ、中世には鉄が豊富に供給されるようになり、多くの人々が鉄器を使用することが可能になりました。それに伴い、鍛冶の技術も飛躍的に発展し、鉄器工業が成立しました。新たな製鉄技術として、鋼を生み出す「ケラ押し法」や、銑鉄を作る「ズク押し法」が確立されました。これにより「銑鉄」や「軟鉄」といった新しい素材が登場し、鍛冶屋では刀剣だけでなく、農具や家庭用具など多様な製品が製作されるようになりました。

地域に特産地ができ、和泉堺の包丁、播磨三木の大工道具、越後三条の鎌などが知られるようになります。近世後期には、たたら炉が普及し、砂鉄を精錬する村の鍛冶が発展。材料を他所から仕入れる鍛冶屋も現れ、転職の選択肢が広がっていきます。

江戸時代に入ると、鍛冶はさらに細分化され、刀鍛冶、農具鍛冶、鉄砲鍛冶、庖丁鍛冶などが生まれました。大名による保護政策により、特定の地域での居職化が進みました。

明治時代に入り、近代的な製鉄技術が導入されると、多くの伝統的な鍛冶屋は姿を消し、賃労働へとシフトすることになりました。しかし中には知識を生かし、金属加工業として工場を開く者もおり、近代工業を支える存在となりました。

鍛冶と鍛治の違い

「鍛冶」という言葉は日本で作られた用語であり、古代には「鍛治」とも書かれました。漢字の選択に関しては、混同が生まれることもありました。多くの辞書では「鍛」を用いることが一般的ですが、早くから「鍜」を用いることが正しいとされていました。

近年、鍛冶を「かじ」と読むことが正式に認められ、伝統的な技法を継承する職人はほとんど残っていませんが、鍛冶屋としての技術はさまざまな形で日本の文化に影響を与えています。

著名な鍛冶師

世界中には歴史的に有名な鍛冶師が存在します。北欧神話にはDvalinnやDurinnなど、伝説の鍛冶師が登場します。また、中国の欧冶子や干将・莫耶といった著名な鍛冶屋の存在も見逃せません。日本においても、名刀を生み出した刀鍛冶たちの技術は高く評価されています。

現在、鍛冶はその技術と歴史を受け継ぐ形で、近代化の波を乗り越えてきた職人技として続いています。

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