鍾同

鍾同（しょう どう、1424年 - 1455年）は、明代中期に活躍した官僚です。字は世京といい、吉安府永豊県を本貫とします。彼は翰林院修撰であった鍾復の子として生まれ、幼い頃から学問に励みました。その結果、1451年（景泰2年）には見事に進士に及第し、官僚としての道を歩み始めます。

翌1452年（景泰3年）には、貴州道監察御史という要職に任じられ、その才能を遺憾なく発揮しました。監察御史は、官僚の不正を監視し、正す役割を担っており、鍾同は職務に忠実に取り組みました。しかし、彼の人生は、1453年（景泰4年）に転機を迎えます。この年、懐献太子朱見済が亡くなったことをきっかけに、朝廷内では、沂王朱見深を太子に復位させようという動きが活発化しました。

鍾同は、この動きに深く関与し、郎中の章綸とともに沂王と密かに会談し、太子復位のための請願を行うことを約束しました。そして1454年（景泰5年）5月、彼は時政を論ずる上疏を行い、その中で沂王の太子復位を強く訴えました。しかし、この直言は時の皇帝である景泰帝の不興を買いました。数日後、章綸も同様の上疏を行ったことで、事態はさらに悪化しました。

景泰帝は、二人の行動を許さず、鍾同と章綸を逮捕し、獄に下しました。さらに、1455年（景泰6年）8月には、大理寺少卿の廖荘が沂王について言及したことで、杖罰を受ける事件が発生しました。この一連の事件を通して、景泰帝の側近たちは、この運動を鍾同が主導したものだと主張しました。その結果、鍾同は獄中で過酷な巨梃による杖罰を受け、無念にも命を落としました。享年はわずか32歳でした。

彼の死後、1457年（天順元年）に英宗が復位すると、その功績が認められ、大理寺左寺丞の位が追贈されました。さらに、成化年間には、恭愍という諡号が贈られ、その忠義と勇気は後世に語り継がれることとなりました。

鍾同の生涯は、激動の時代の中で、自身の信念を貫き通した官僚の典型と言えるでしょう。彼は、たとえそれが皇帝の不興を買うことになろうとも、正しいと信じたことを主張し続けました。その結果、悲劇的な結末を迎えることとなりましたが、その精神は多くの人々の心を打ち、後世に大きな影響を与えました。

鍾同には二人の息子がおり、鍾啓（咸寧知県）と鍾越（通政使司知事）がいます。彼らもまた、父の遺志を継ぎ、それぞれの分野で活躍しました。

参考文献

* 『明史』巻162 列伝第50

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