鍾離権

鍾離権の伝説と教え

鍾離権（しょうり けん）は、中国の道教における重要な存在で、八仙の一人として知られています。彼の姓は鍾離、名は権、字は寂道、またの名を雲房先生とも呼ばれ、多くの信者に崇敬されています。さらに、正陽真人という別名も持っており、その教えは現代においても広く伝えられています。

鍾離権は、元々漢王朝に仕官していました。彼は左諫議大夫という重要な役職についていましたが、やがて王朝が滅ぶと、西晋に仕官し、将軍の地位に昇進します。しかし、彼の軍事的運命は波乱に満ちており、一度の戦いで敗北を喫し、終南山へと逃げ込むこととなりました。この山中で迷い込んでいると、運命的に東華帝君と出会い、道教の深遠なる知識と技能を授けられました。

この出会いによって、鍾離権は「長生真訣」「赤符玉篆金科霊文」「金丹火候青龍剣法」といった密教的な教えを受けることとなります。これにより彼は道教の一流の仙人としての地位を確立したとされています。ただし、歴史的な見地からは、彼の実際の生涯は五代の時期に存在していたのではないかという説もあります。その中で「天下都散漢（天下一の暇人）鍾離」と自称していたことから、名は「鍾離権」となったという見解があります。

鍾離権の姿は非常にユニークです。彼は頭に二つのあげまきを結い、太った腹を晒している姿で描かれ、これが人々に親しみを持たせています。また、彼の持ち物である芭蕉扇は、死者の魂を呼び戻す力を持つとされており、その神秘的な能力は信者たちの間で特に語り継がれています。

彼の師匠である東華帝君は非常に高い地位の存在であり、鍾離権の教えはその後の弟子である呂洞賓や曹国舅へと引き継がれました。全真教の教義の中では、彼が東華帝君の教えを呂洞賓に伝えたとされ、その重要性が強調されています。鍾離権は「正陽開悟伝道垂教帝君」の封号を持つなど、教義の中心的な存在として崇められています。

彼の存在は、道教における不老不死の象徴だけでなく、教えの伝承者としても理解されています。鍾離権の生涯と伝説は、その後の道教の発展にも大きな影響を与え、多くの人々によって尊敬されています。

このように、鍾離権は神秘的な力を持つ仙人として、道教の中で重要な役割を果たしています。彼の教えや人物像は、現在でも多くの人々の信仰の対象となっており、彼の伝説は今なお生き続けています。

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