全真教

全真教についての詳細

全真教（ぜんしんきょう）は、12世紀の中国北部で王重陽によって創設された道教の一派です。この教派は、道教の伝統を継承しながらも、儒教や仏教の思想を取り入れた点で特異な存在と言えます。王重陽は、儒教の教えを重んじつつ、修行の重要性を強調し、人々の徳を高める教えを広めました。

七真人とは

全真教の教義を支えているのは「七真人」と呼ばれる七人の高弟です。彼らは馬丹陽、譚長真、劉長生、丘長春、王玉陽、郝広寧、孫不二の名前が挙げられ、教派の拡大に大きな役割を果たしました。彼らは王重陽から直接教えを受け、教団の発展に尽力しました。

教理の特徴

全真教の教理は、主に内丹的道教思想に則っており、王重陽が著した『重陽立教十五論』にその核心が見られます。これには道教本来の長生を求める教えに加え、仏教、特に禅宗の影響が見て取れます。また、南宋の朱子学も影響を与えたとされ、王重陽は儒教、仏教、道教の「三教一致」を掲げていました。

全真教の修行は「真功」と「真行」の融合を重視し、個人の救済だけでなく、他者への救済も重要視されます。この考えは全真教の三教融合の思想と深く結びついています。

教団規則

全真教では「全真清規」と呼ばれる教団の規則が定められており、これは禅宗の規範を基にしています。出家の身分を重視し、打坐や内丹の修行が重要視されます。また、文字に依存しない考え方も導入されています。

歴史的背景

創始者の王重陽は、山東地方にて弟子を取って厳格な指導を行い、一般への布教活動を行いながら教団を成長させました。彼は1170年に亡くなると、弟子たちは自らの修行を掲げて各地に広がりました。その中で、馬丹陽は陝西省で教団の基盤を築く努力を続けました。

1187年には王玉陽が金の世宗に認められ、1188年には丘長春も法師号を授与され、全真教は正式に公認されました。しかし、モンゴル帝国の台頭により教団は苦境に立たされました。丘長春は高齢にも関わらず、チンギス・ハンに会うための旅に出かけ、そのことは「長春真人西遊記」として知られています。

元代に入っても全真教は発展を続け、道教石窟の開鑿や道蔵の編纂などの大規模な事業が行われました。元の時代には道教が地下に追いやられることもありましたが、全真教は一定の支持を受けながら発展しました。

明代には王室からの圧力により一時的に衰退しましたが、王常月の出現によって再びその勢力を盛り返しました。彼の施策により多くの道士が教えを受ける機会が作られ、全真教は再生を遂げました。

研究の進展

全真教に関する研究は長い間進んでいませんでしたが、近年では教理や実践に関する分析が進んでいます。特に内丹と全真教の関連についての研究が注目されており、新たな視点からの考察も増えてきています。

全真教は現代においても影響力を持ち続け、多くの信者に支持されています。北京にある白雲観はその代表的な道観でもあります。

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