鏡心流

鏡心流について

鏡心流（きょうしんりゅう）は、幕末の剣豪である荒尾光政によって創立された剣術の流派です。本流派は、千葉にある北辰一刀流や桃井春蔵が教えた鏡心明智流、さらには宝蔵院高田流槍術など、多様な武術流派から得た知識と技を融合させて創り上げられました。この流派が生まれた背景には、幕末の混乱期における実戦重視の剣術が求められたことがあります。

荒尾光政の生涯

荒尾光政は天保3年（1832年）10月12日に関宿藩の上屋敷で生まれました。幼名は「次郎」とし、後に光政と称しました。彼は父の大坪正邦の影響を受けて育ち、幼少期から槍術と剣術に才能を示しました。17歳まで関宿藩の藩校である鏡倫館で教育を受け、その後、古河藩主久世広周に抜擢されることになります。

彼は安政4年（1857年）に古河藩医・河口信任の娘と結婚し、その家系ともつながりを持つようになりました。文武を学び、特に剣術においては、嘉永3年（1850年）に江戸の名剣士、桃井春蔵の弟子となってから、ますます腕を磨いていきました。その後、彼はさまざまな剣術流派を学び、特に淺山一伝流の指南役を打ち破ることで、剣術の実力を証明しました。

実戦本意の剣術

光政の人生には、さまざまな戦いとその経験が色濃く残っています。慶応元年（1865年）には、桃井春蔵と共に士学館での稽古納めに参加し、新徴組との接触を持つ一方、文久2年（1867年）の坂下門事変でも警護役として、真剣勝負の緊張感を実感しました。このように、彼は実戦的な剣術の重要性を強く認識していたのです。

文筆活動と流派の発展

維新後、荒尾光政は境町に居を構え、文筆活動を行いながら「演武館」を設立しました。彼は流派の創始者として後進の育成に尽力し、鏡心流の技術を広めました。明治36年（1903年）5月6日、光政は72歳で他界しました。彼の菩提寺には、有志による「荒尾光政の碑」が建立されています。

現在の鏡心流

現在伝わる鏡心流には、抜刀術に関連した10本の型があり、これには立ち技と座技が含まれます。これらの型は、元々鏡新明智流から伝えられたものですが、組太刀の技術は失伝してしまいました。伝えられる型には以下のものがあります：

1. 抜刀斬
2. 袈裟斬
3. 抜斬及び袈裟懸斬
4. 真向斬
5. 前後抜斬
6. 前後左右立合斬
7. 乱闘斬
8. 闇進中之不意突
9. 闇中家中斬
10. 鼠頭牛頭

結論

鏡心流は、ただの剣術ではなく、そこに込められた倫理や精神性が重要視されている流派です。「心ヲ以テ鏡トナスベク　鏡ヲ以テ心トナスベシ」という理念に基づき、技術の習得だけでなく、心のあり方についても教育が行われました。今後も、鏡心流の技術と精神性が伝承され続けることが期待されています。

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