長久手発砲立てこもり事件

長久手発砲立てこもり事件の概要

2007年5月17日から18日にかけて、愛知県愛知郡長久手町（現：長久手市）で発生した長久手発砲立てこもり事件は、元暴力団組員の男が元妻を人質に取り、自宅に立てこもった事件です。発生から解決まで約29時間に及び、愛知県警察の警察官1名が殉職、男の妻子と警察官1名が負傷するという痛ましい結果となりました。

この事件は、警察の特殊部隊SATが初めて殉職者を出すという事態となり、社会に大きな衝撃を与えました。また、事件の一部始終がテレビで中継されたことで、立てこもり事件に対する新たな対策の必要性が強く認識されるきっかけとなりました。

事件の経緯

2007年5月17日午後、愛知県長久手町の民家に住む息子から「父親が拳銃を持って暴れている」という通報が警察に入りました。駆けつけた警察官に対し、男は回転式拳銃を発砲。巡査部長が首を撃たれ、倒れました。

男は、別れた元妻との復縁がうまくいかないことに腹を立て、犯行に及んだとされています。巡査部長への銃撃とほぼ同時に、息子と娘も拳銃で撃たれ負傷しました。その後、男は元妻を人質に取り、自宅に立てこもりました。

警察は現場付近の交通を遮断し、男に対して説得を続けましたが、男は「救急車を近づけたら撃つ」、「弾は100発ある」などと脅迫。倒れている巡査部長を容易に救出できない状況が続きました。

特殊捜査班(SIT)が現場に到着後、防護車両を玄関に突入させて巡査部長を救出する作戦が計画されましたが、実行直前に中止。その後、救出部隊が巡査部長を救出しようとした際、男が発砲し、後方支援をしていたSATの巡査部長が被弾、殉職しました。

膠着状態が続いた後、5月18日午後、男はラジオ局に電話をかけ、DJとの会話を要求。その後、人質となっていた元妻が脱出し保護されました。元妻の脱出後、男は警察の説得に応じ投降、逮捕されました。

その後の捜査と裁判

事件後の調べで、男は巡査部長を含む4人に発砲したことが判明しました。使用された拳銃はルビー・エクストラとみられ、実弾と薬莢が多数発見されました。

殉職した林巡査部長は二階級特進し、警察勲功章と旭日双光章が授与されました。男は殺人罪などで起訴され、一審で無期懲役判決を受けました。検察・被告人双方が控訴しましたが、最高裁で棄却され、無期懲役が確定しました。

警察の対応とマスコミ報道への批判

この事件における愛知県警察の捜査指揮については、様々な方面から批判が出ています。特に、負傷した巡査部長の救出が遅れたこと、SAT隊員が殉職した後も強硬手段に踏み切れなかったことなどが問題視されました。

一方、マスコミの報道姿勢にも批判が集まりました。警察官やSATの配置を放送し、犯人を刺激する行為は、警察官や人質の安全を脅かすとして非難されました。

事件の影響

事件の影響で、現場周辺の交通が封鎖され、学校が休校になるなどの影響が出ました。また、事件と類似する内容のテレビ番組が放送を見合わせるなどの対応が取られました。

この事件は、立てこもり事件における警察の対応やマスコミ報道のあり方について、社会に大きな問いを投げかけることとなりました。

もう一度検索