長保寺

長保寺（ちょうほうじ）

長保寺は、和歌山県海南市に位置する天台宗の寺院で、慶徳山と号します。本尊は釈迦如来で、開山は平安時代中期の僧、性空（しょうくう）です。3棟の国宝建築と、紀州藩主紀州徳川家歴代の墓所という国の史跡があることで知られています。

歴史

寺伝によれば、長保寺は平安時代中期の長保2年（1000年）に、一条天皇の勅願により、円仁（慈覚大師）の弟子の性空によって創建されました。寺号は年号から取られています。寛仁元年（1017年）には七堂伽藍と子院十二ヶ坊が完成したと伝えられています。

創建時は現在地より西方にありましたが、鎌倉時代末期に現在地に移転し、伽藍が整備されました。現存する本堂、多宝塔、大門（いずれも国宝）は、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての建築で、中世の仏教建築がまとまって残っている点が貴重です。

戦国時代には衰退しましたが、江戸時代に紀州藩主となった浅野幸長から5石の寄進を受けました。寛文6年（1666年）には、紀州藩主徳川頼宣が長保寺を訪れ、山に囲まれた要害の地にあることから、紀州徳川家の菩提寺に定めました。寛文12年（1672年）には、2代藩主徳川光貞によって500石が寄進されています。境内東斜面には約1万坪にも及ぶ広大な藩主廟所があり、頼宣以降の歴代藩主が眠っています。ただし、5代吉宗（後の8代将軍）と13代慶福（よしとみ、後の14代将軍家茂）の墓は、それぞれ東京の寛永寺と増上寺にあります。

宗派は、当初天台宗でしたが、後に法相宗、さらに真言宗に改宗し、紀州徳川家の菩提寺となってから天台宗に復しました。

鎌倉時代から南北朝時代にかけて建築された本堂、多宝塔、大門の3棟が国宝に指定されています。

境内

本堂（国宝）：「長保寺記録抜書」によれば延慶4年（1311年）建立。入母屋造、本瓦葺き。桁行（正面）5間、梁間（側面）5間で、1間の向拝がついています。
多宝塔（国宝）：正平12年（1357年）建立。本瓦葺。
護摩堂
阿弥陀堂
鐘楼
鎮守堂（重要文化財）：永仁3年（1295年）建立。一間社流造。かつては鎮守八幡宮、八幡社と呼ばれていました。
庫裏
客殿（和歌山県指定有形文化財）：安永8年（1779年）建立。
御霊屋（和歌山県指定有形文化財）：寛文7年（1667年）建立。藩主徳川頼宣が熊野巡視の帰途に長保寺に立ち寄り、紀州徳川家の菩提寺と定めたことに伴い、頼宣が建立したと伝えられる仏殿が、頼宣の没後に位牌堂に充てられました。桁行7間、梁間8間、寄棟造、本瓦葺で、南東に玄関がついています。西側の2室に厨子が置かれ、歴代藩主および正室・側室等の位牌が祀られています。
廟門
福蔵院：塔頭。
大門（仁王門、国宝）：後小松天皇の勅宣を受け、寺僧の実然によって嘉慶2年（1388年）に再建。三間一戸楼門、入母屋造、本瓦葺。扁額「慶徳山長保寺」は妙法院堯仁法親王の筆。
紀州徳川家歴代墓所（国の史跡）：歴代紀州藩主の墓が並んでいますが、5代徳川吉宗と13代徳川慶福（家茂）は江戸幕府の征夷大将軍となっているため、ここに墓は設けられていません。歴代藩主の墓地としては日本最大の規模です。

文化財

国宝
本堂 附：厨子
多宝塔
大門 附：扁額
重要文化財
鎮守堂
国の史跡
紀州藩主徳川家墓所
和歌山県指定有形文化財
客殿
紀州藩御霊屋 1棟
木造阿弥陀如来坐像
木造金剛力士立像 2躯
和歌山県指定天然記念物
長保寺の林叢：海南市周辺では珍しい常緑広葉樹林です。
長保寺旧蔵の重要文化財
絹本著色仏涅槃図：文化庁保管、鎌倉時代。

所在地

〒649-0164 和歌山県海南市下津町上689

交通アクセス

JRきのくに線 下津駅よりタクシー、または徒歩30分
阪和自動車道海南インターチェンジから車で15分

周辺情報

善福院

外部リンク

長保寺（公式サイト）

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