長内了

長内 了（おさない さとる）

日本の法学者。英米公法を専門とし、特に連邦制の研究で知られる。中央大学名誉教授。

生涯

1942年（昭和17年）8月29日、北海道釧路市に生を受ける。北海道札幌南高等学校を卒業後、中央大学法学部法律学科に進学。在学中の1964年（昭和39年）には、難関とされる司法試験に合格するという早熟な才能を示した。1966年（昭和41年）3月に同学部を卒業後、中央大学大学院法学研究科修士課程英米法専攻へと進むが、1967年（昭和42年）3月にこれを退学。大学院では、法学者の小堀憲助教授の下で深く研鑽を積んだ。

同年4月、母校である中央大学法学部の助手に就任し、教育・研究者としての第一歩を踏み出す。以後、順調にキャリアを重ね、1972年（昭和47年）4月に同学部助教授、そして1979年（昭和54年）4月には同学部教授へと昇任した。長年にわたり、英米法分野、特に公法に関する講義を担当し、多くの学生や法曹志望者への指導にあたった。

2004年（平成16年）4月からは、新たに設置された中央大学大学院法務研究科（法科大学院）の教授も兼任。専門的な法曹養成教育にも力を注いだ。2013年（平成25年）3月、中央大学を定年により退職。長きにわたる教育・研究活動に区切りをつけた。

退職から間もない2013年（平成25年）9月4日、肺がんのため惜しまれつつ逝去。享年71。

研究・思想

長内氏の専門は英米法、中でもアメリカの公法であった。氏の研究姿勢の根底には、歴史が浅く、共通の価値観が確立途上にあったアメリカにおいて、司法制度が憲法の根本理念を指針とし、いかにして人権の擁護や社会正義の実現に向けた多様な判断や対応を重ねてきたかを深く探求することが、現代日本社会が抱える様々な課題を理解し、解決の糸口を見出す上で多くの示唆を与えてくれる、という強い信念があった。

また、氏は単に法曹という特定の職種に限定せず、より幅広い層の人々が法を学ぶことの重要性を訴えた。法の支配、人権の尊重、民主主義といった基本的な法的・政治的理念を深く理解し、これらを身につけた人々が、それぞれの専門分野や活動領域において積極的に行動することこそが重要であり、そのような人材が一人でも多く社会に輩出されることを強く願っていた。

特に、氏が深く傾倒し、講義でも定評があったのが連邦制に関する研究である。アメリカ合衆国が南北戦争という激しい内戦を経て、外交や軍事といった権限を連邦政府へと集約し、単一の国家としての体制を確立していった歴史を分析。この過程で、かつては敵対した州同士が戦争することなく共存するようになった事実に着目した。氏の見解では、伝統的に「主権は分割できない」とされる原則を超え、多様な地域や主体が権限を分有しつつ共存する連邦制のあり方こそが、現代世界における複雑な国際関係や地域紛争を克服し、世界平和を実現するための一つの重要な道標となり得る、との思想を持っていた。その連邦制に関する講義は、多くの学生から深く理解しやすいと高い評価を受けていた。

関連事項

アメリカ合衆国憲法
アメリカ合衆国の司法制度

主な著作等

長内氏の研究成果の一部は、外部リンクとして示されるような中央大学の広報誌やオンライン記事等で確認することができる。「懲罰的損害賠償」に関する論考や、カナダの独立プロセスに関する分析など、幅広いテーマに関心を示していたことがうかがえる。

（参考文献：提供された情報に基づく）

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注記： 本記述は、提供された情報に基づき、辞書項目として再構成したものです。

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