長坂猪之助

長坂 猪之助: 江戸時代の囲碁の名手

長坂 猪之助（ながさか いのすけ、1764年 - 1845年）は、江戸時代の庄内藩に仕官していた囲碁棋士で、その腕前は当時の囲碁界でも高く評価されていました。彼は戦国時代に活躍した長坂信政の末裔であり、血槍九郎と称される強者の血を引く者でした。猪之助は庄内藩の酒井家に槍術指南として仕え、彼の技術は囲碁においても引き継がれました。

碁の修行と段位の昇進

猪之助は、囲碁の名門である安井仙知の門下に入り、正式な囲碁の修行を始めます。彼の入門は寛政5年（1793年）のことで、江戸に参勤交代中に安井仙知に師事。安井仙知の指導により、当時19歳の四段中野知得（後の安井知得仙知）との対局を通じて、猪之助は腕を磨きました。彼らは15局の対局を行い、猪之助は4勝11敗の成績を残しましたが、これにより安井仙知から二段の位を与えられました。

同門の対局と成果

竹野松之助（本因坊丈和）との出会いも、猪之助の囲碁人生において大きな転機となりました。文化4年（1807年）、松之助が鶴岡を訪れ、猪之助と約1年間で二十一番の対局を行いました。前半の12局では松之助が8勝4敗とリードしましたが、残りの9局では松之助が5勝4敗に抑え、結果は均衡を保ちました。これにより、猪之助の囲碁界での名声がさらに高まったことは間違いありません。

新たな挑戦と師との関係

文政5年（1822年）、本因坊丈和が信濃国を訪れた際、関山虎之助との対局を勧められました。虎之助が猪之助を訪ねて対局を求めたとき、彼は既に二段でしたが、師の仙知からは四段と評価されていました。対局において虎之助は二子で挑戦し、猪之助との対局を勝ち進めました。この時の対局は、猪之助の実力を示す一例となったでしょう。

猪之助の後の道

猪之助がその後六段を受けたというチャンスがあったことも伝えられています。彼の生涯を通じた囲碁に対する情熱と実績は、その後も多くの棋士たちに影響を与え続けることとなりました。猪之助の戦略や手法は、囲碁界において重要な位置を占め、彼の名声は長きにわたり語り草となりました。

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参考文献

• - 依田紀基『泰然知得』日本棋院 2003年
• - 矢田直巳『秘譜発掘』誠文堂新光社 2004年
• - 福井正明『碁界黄金の十九世紀』日本棋院 2007年
• - 永岡治『二人の本因坊』静岡新聞社 2008年

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