長尾定景 (足利長尾氏)

長尾定景（ながお さだかげ）は、室町時代後期に生きた武将です。関東における戦国大名、山内上杉家の重要な家臣団を構成した長尾氏の一族で、特に下野国足利郡（現在の栃木県足利市周辺）を拠点とした足利長尾家の第二代当主にあたります。

足利長尾家の初代当主である長尾景人の嫡男として生まれました。通称を新五郎と称し、但馬守の官職にも任じられたと伝えられています。

文明4年（1472年）、父・景人の死去に伴い、定景は足利長尾家の家督を継承しました。当時の武家の慣習に従い、家督を継ぐにあたって、主君である関東管領・上杉顕定から諱（いみな）の一字である「定」の字を賜り、「定景」と名乗ったとされています。これは、主君と家臣の間の強い主従関係を示すものです。

しかし、定景の生涯は非常に短いものでした。伝えられるところによれば、彼は生まれつき病弱であったとされ、家督を継いでからわずか三年という短い期間で急逝してしまいました。具体的な没年は文明7年（1475年）頃と考えられますが、その詳細な活動や病状については史料に乏しく、多くは分かっていません。当時の医療水準を考慮すると、病による若死は珍しいことではなかったのかもしれません。

定景の法名は総嶽道統居士と伝えられています。その墓所は、足利長尾家の本拠地であった下野国足利にある長林寺（現在の栃木県足利市西宮町）に営まれました。

定景の早すぎる死により、足利長尾家の家督は彼の弟である景長が引き継ぐこととなりました。景長がまだ若年であったためか、あるいは家中の混乱を避けるためか、家督相続にあたっては、叔父にあたる長尾房清が景長の後見役を務めたとされています。長尾房清は足利長尾家の有力者であり、その補佐によって景長は家をまとめることができたのでしょう。

長尾定景は、足利長尾氏の歴史において、短期間ながらも二代当主として名を残した人物です。彼の在世期間は、応仁の乱が終結に向かう頃であり、関東でも山内上杉家と扇谷上杉家の対立など、戦乱の兆しが見え始めていた時期にあたります。そのような時代背景の中で、家督を継ぎながらも志半ばで世を去らざるを得なかった定景の生涯は、当時の武将たちの定めなき運命を象徴しているとも言えるでしょう。足利長尾氏はこの後も山内上杉家の重臣として、関東の動乱に関わっていくことになります。

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