上杉顕定

上杉顕定（うえすぎ あきさだ）

上杉顕定は、室町時代後期から戦国時代にかけての武将であり、守護大名です。山内上杉家11代当主として、越後上杉家から家督を継ぎ、40年以上にわたり関東管領を務めました。

生涯

山内上杉家の家督相続

享徳3年（1454年）に上杉房定の子として生まれました。寛正7年（1466年）2月、関東管領であった上杉房顕が武蔵国五十子陣にて没すると、後継者がいませんでした。家宰の長尾景信は、長尾景仲の遺言に従い、房顕の従兄弟である上杉房定の子を後継者にしようとしましたが、房定はこれを拒否しました。同年10月、室町幕府8代将軍・足利義政からの命令を受け、房定の次男である龍若（顕定）が山内上杉家の家督を継承し、当主となりました。

享徳・長享の争乱

顕定が家督を継いだ当時は、享徳の乱の最中であり、古河公方・足利成氏との間で関東の覇権を争っていました。文明3年（1471年）には古河御所を占領するなどの勝利を収めましたが、文明8年（1476年）に有力家臣の長尾景春が古河公方と結んで離反したため、苦境に立たされました（長尾景春の乱）。翌文明9年（1477年）には、五十子陣からも撤退を余儀なくされました。この乱の背景には、顕定の家督相続以前から存在していた上杉氏体制内部の権力闘争があったとされています。

成氏軍の侵攻により、上野国白井付近まで追い詰められた顕定は、扇谷上杉家の上杉定正と協力し、文明10年（1478年）正月に幕府と成氏の和睦を取り持つことを条件に古河公方と和睦しました。その後、景春の反乱は扇谷上杉家家宰の太田道灌の活躍によって鎮圧されましたが、道灌の台頭により扇谷上杉家の勢力が増しました。

文明14年（1482年）には、顕定の父・房定の仲介により幕府と古河公方の和睦が成立し、30年に及んだ享徳の乱は終結しました。しかし、顕定は定正と対立し、定正が道灌を暗殺したことをきっかけに、長享元年（1487年）に長享の乱が勃発しました。長享2年（1488年）には、実蒔原・須賀谷・高見原の合戦（関東三戦）で顕定は定正に押されましたが、関東管領である山内家と分家的存在の扇谷家との間には実力差があり、抗争が長期化するにつれて顕定が有利な立場となりました。

明応2年（1493年）には、山内家の領国であった伊豆国へ伊勢宗瑞が侵攻する事件（伊豆討ち入り）が起こりました。明応3年（1494年）に両上杉氏の抗争が再発すると、定正は伊勢宗瑞の軍を相模国・武蔵へ招き入れましたが、荒川を挟んで対陣していたところで定正が急死したため、伊勢軍は撤退しました。長享の乱初期に扇谷家を支援していた古河公方も、この頃には山内家方へと転じていました。

明応5年（1496年）には、顕定の軍勢が相模に攻め入り、伊勢宗瑞の弟・伊勢弥二郎が立て籠もる小田原城を攻略しました。その後、東郡へ軍勢を進め、上田氏の実田要害を包囲し、さらに定正の跡を継いだ上杉朝良の出陣を受けて河越に軍を進めました。明応6年（1497年）には、河越城に対する前線基地として武蔵上戸（現在の河越館跡）に陣を置き、古河公方・足利政氏を迎えました。政氏は数ヶ月滞在した後古河へ帰還しましたが、上戸陣はその後7年にわたり山内家の陣所として機能しました。

永正元年（1504年）には、今川氏親と伊勢宗瑞の援軍を得た上杉朝良と立河原の戦いで戦い、大敗を喫しましたが、越後上杉家の援軍を受けて反撃に転じ、翌年には朝良を河越城に攻めて降伏させ、朝良の江戸隠居を条件に和睦しました。これは、長享の乱における事実上の勝利宣言と言えます。

古河公方との関係と永正の乱

明応3年（1494年）に古河公方と結びついて以来、顕定は東国における公方－管領体制の再構築を図っていました。特に足利政氏とは密接な関係を築き、政氏の弟・義綱を養子として迎え入れ「顕実」と改名させ、自らの後継者に据えようとしました。後に政氏と子の高氏（高基）が不和となると、顕定は出家して「可諄」と号し、両者の仲介に尽力しました。

古河公方の内乱を収めた直後の永正6年（1509年）7月、顕定は養子・憲房と共に越後に攻め入り、長尾為景（上杉謙信の父）と上杉定実を越中国に追放しました。この侵攻は、永正4年（1507年）に顕定の弟で越後守護を務めていた上杉房能が、守護代の為景を主力とした上杉定実軍に追われて自刃したことへの報復とされています。

顕定軍は府内を制圧しましたが、その統治は強硬で国人の反発を招き、翌年には長尾為景らの反攻に遭いました。永正7年（1510年）6月20日の長森原の戦いにおいて、顕定は高梨政盛に敗北し、自刃しました。享年57。

顕定の死後、顕実が関東管領を継承しましたが、越後から帰還した憲房が顕実と対立し内乱を起こし、山内家の衰退を招きました。また、顕定が山内家の養子となって以来、緊密な関係にあった山内家と越後上杉家および長尾家の関係も断絶しました。

管領塚

新潟県南魚沼市下原新田には、長森原の戦いの戦没者を埋葬したとされる塚が点在しており、その中で最も大きな塚は管領塚と呼ばれ、顕定の墓と伝えられています。現在、管領塚は史跡公園として整備されています。

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