長屋紳士録

映画『長屋紳士録』について

『長屋紳士録』（ながやしんしろく）は、1947年5月20日に公開された小津安二郎監督の映画です。小津は1946年2月に日本に帰国し、一年間の休養を経て本作の撮影に取り掛かりました。この映画は、松竹専属の俳優たちを起用し、東京下町を舞台にした人情劇となっています。戦前の作品としばしば比較されることもあり、当時のリアリティを織り交ぜた描写が特徴的です。

あらすじ

映画は、東京の長屋街を背景に、親を失った子供・幸平の物語を描いています。幸平は、新しい生活を始めるために長屋に連れてこられますが、住人たちは彼の面倒を神経質に感じ、最初はほとんど無関心です。ところが、金物屋を営むおたねがこの子供を引き取り、彼の面倒を見ることになります。

最初は子供の育て方に戸惑い、手をこまねいていたおたねも、次第に幸平に愛情を抱くようになります。動物園に連れて行ったり、おいしい食べ物を与えたりしながら、彼らは楽しい日々を共有していきます。しかし、幸平の中に宿る悲しみと役割の難しさがある中で、物語は進展します。やがて、幸平の父親を名乗る男性が現れ、彼を引き取っていく場面が訪れます。おたねは、子供の幸せを願いつつも、思わず涙を流してしまうのです。この出来事は、愛情と別れというテーマが交差する感動的な瞬間となっています。

スタッフ

本作のスタッフは次の通りです：

• - 監督：小津安二郎
• - 脚本：池田忠雄、小津安二郎
• - 撮影：厚田雄春
• - 音楽：斎藤一郎
• - 美術：浜田辰雄
• - 編集：杉原よ志
• - 録音：妹尾芳三郎
• - 照明：磯野春雄
• - 衣裳：斎藤耐三

キャスト

主要キャストには以下のような俳優が揃っております：

• - おたね役：飯田蝶子
• - 幸平役：青木放屁
• - 幸平の父役：小沢栄太郎
• - その他、河村黎吉、吉川満子、笠智衆らも出演しています。

作品の特長と評価

小津安二郎は、戦後の日本社会を背景にしながら、普遍的な人間関係や愛情を描き出しています。また、映画の中に焼け野原や戦災孤児を登場させることによって、当時のリアリティを巧みに取り入れています。特に、子供の心情と大人の複雑な思いが交差することで、感情の深さが増しており、観客に深い印象を与える仕上がりとなっています。

本作は、小津の作品の中でも評価が高く、日本映画の重要な一コマとされています。登場人物の心の変化や繊細な表現は、見る者に強いメッセージを伝え、今なお多くの人々に愛されています。

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