長岡省吾

広島平和記念資料館の礎を築いた男：長岡省吾

長岡省吾（1901年～1973年）は、広島平和記念資料館の設立に尽力し、初代館長を務めた人物です。その生涯は、ハワイでの出生、広島での被爆体験、そして資料館設立へと続く、波乱に満ちた道のりでした。

長岡はハワイで生まれ、幼少期に日本へ帰国。広島県で育ち、修道中学校を経て中国ハルビンへ渡り、地質学や鉱物学を学びました。1940年に帰国後は尼崎で生活を送りますが、1944年には故郷広島に戻り、広島文理科大学（現広島大学の前身の一つ）で鉱石学の非常勤講師として教鞭をとります。

運命の1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下されました。長岡は当時、大学の研究室の同僚や学生と共に山口県で地質調査中でした。翌日に惨状を知り、広島へ急行します。大学は建物は残っていましたが、内部は全焼し、長年かけて収集した岩石標本や調査道具は失われていました。しかし、長岡は絶望せず、焼け跡から石、瓦、溶けたガラス瓶、トタン、レンガなど、あらゆるものを資料として収集を始めます。被爆の影響による高熱や下痢に苦しみながらも、資料収集を続けました。

同年9月には、学術研究会議が設置した「原子爆弾災害調査研究特別委員会」の物理学化学地学科会の地学班に参加。広島と長崎で調査を行い、爆発点・爆心地の特定に貢献しました。

1948年、長岡は広島市に採用され、被爆資料の収集・調査を行う専門職として活躍します。個人で収集した資料も市に提供し、1949年には広島市中央公民館の一室に「原爆参考資料陳列室」を開設。翌年には原爆記念館が開館しました。そして1955年、念願の広島平和記念資料館が開館すると、初代館長に就任。1962年までその職務にあたり、資料館の発展に大きく貢献しました。

その後も、1967年には広島平和記念資料館展示協議会委員となり、医学的資料の充実や展示環境の整備を提案するなど、資料館の更なる発展のために尽力しました。

長岡省吾の生涯は、被爆という悲劇を乗り越え、平和への願いを込めて、広島平和記念資料館の設立と発展に捧げられた、まさに献身の物語でした。彼の功績は、現在も世界中の人々に広島の悲劇と平和の大切さを伝える広島平和記念資料館に刻み込まれています。数々の困難を乗り越え、資料館設立に尽力した彼の意志は、後世に語り継がれるべき偉大なものです。彼の努力によって、被爆の記憶は未来へと確実に伝えられ続けています。

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