長崎目付

長崎目付（ながさきめつけ）

長崎目付は、江戸幕府における重要な役職の一つで、特に長崎奉行を監督し、その業務を補佐する役割を果たしました。

役職の設立と背景

この制度は、正徳5年（1715年）に施行された海舶互市新例によって設けられました。目付は、長崎奉行と長崎地下役人の監視及び奉行の業務の補佐が主要な任務です。当初、長崎奉行は3人制または4人制で年次交代制が導入されていましたが、より厳密な監視体制が必要となり、半年ごとの任期を持つ目付が設置されることになりました。これにより、奉行間の馴れ合いを防ぎ、また目付自身も奉行の監視を行う相互監視の関係が成立したのです。

この役職は、長崎奉行にとっては一種の脅威であり、目付は奉行の目の上のこぶとされることもありました。文化元年（1804年）には、目付屋敷で支配勘定をこうむった太田蜀山人が弟への手紙の中で、長崎奉行所を「鯨屋敷」、目付屋敷を「鯱矛屋敷」と表現したことからも、両者の関係性が示されています。

職務の詳細

長崎目付の任務は多岐にわたりますが、そのほとんどが奉行の監督業務と直接関連しています。具体的な職務内容は以下の通りです。

1. 緊急報告: 九州における非常時には、奉行と共同で幕府へ報告を行います。
2. 業務協力: 近国諸大名への書状の作成と提出において、奉行と連署する必要があります。
3. 監視業務: 長崎奉行が地域を視察する際には、必ず同行して同業務の監視を行います。
4. 立ち合い業務: 奉行が唐人やオランダ人を招集する際、また地下人を奉行所に呼び出す際には、その立ち合いを行います。
5. 公金の管理: 御用金を保管する際は、奉行と共同でその確認と管理を行い、引き継ぎ時の確認作業も行います。
6. 情報収集: 地下役人からの報告や文書の内容確認を実施し、また地下役人の勤務状態を監視します。

このように、目付は長崎奉行の補佐役としての使命感を持って、幅広い業務を遂行しなければなりませんでした。特に、奉行が病気などで業務できない場合には、目付がその職務の代行を行うことも決定されていました。

役所の位置と建物

長崎目付の屋敷は、正徳5年の海舶互市新例によって設置された屋敷地内に構えられました。この屋敷は広さ863坪で、当時の長崎奉行所を見下ろす位置にあり、目付屋敷や岩原屋敷とも呼ばれていました。欠員が出た際には、他の役人の宿泊所としても利用されることがありました。

歴代の長崎目付

初代長崎目付は石河三右衛門政郷で、1715年の正徳5年に長崎に着任しました。その後も数名の目付が歴代にわたり派遣されましたが、利用の頻度や状況は時代によって変わりました。享保6年以降は長崎目付の定期的な派遣が途絶えましたが、目付の役割は日本の海事貿易の監視において極めて重要でした。

長崎目付は、奉行との相互相談を基に九州地域の取り締まり職務を遂行し、幕末に至るまで日本の国際貿易の要所である長崎を見守る重要な役割を担っていました。その歴史的な背景は、長崎という地の国際性と多文化共生の一端を物語っています。

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