長征9号

長征9号 (Long March 9)

概要

長征9号は、中華人民共和国が現在開発を進めている次世代の超大型ロケットです。中国の宇宙開発計画において、将来の深宇宙探査や大規模な宇宙インフラ構築を支える基幹ロケットとして構想されています。従来の長征シリーズと比較して、その輸送能力は飛躍的に向上しており、中国が目指す宇宙大国としての地位を確立する上で極めて重要な役割を担うことが期待されています。

能力と特徴

このロケットの最大の特徴は、その圧倒的なペイロード（搭載物）輸送能力にあります。計画によれば、地球低軌道（LEO）へは約140トンから150トンもの物資を投入する能力を持つ見込みです。これは、国際宇宙ステーション（ISS）全体の質量に匹敵するような巨大な積載能力であり、既存の多くのロケットを凌駕するものです。

さらに、月遷移軌道（TLI）へも約50トンから53トンのペイロードを送り込むことが可能とされています。月への直接的な物資輸送能力としても、世界的に見ても最大級となるこの能力は、月面での大規模な活動を実現するために不可欠です。

このような超大型ロケットは、単段または複数段の強力な新型ロケットエンジンと、大直径の推進剤タンク、そして堅牢な構造体によって構成されます。長征9号の開発には、これらの要素技術における新たな挑戦が伴うと考えられています。

用途と展望

長征9号の主要な用途の一つとして挙げられているのが、国際月面研究ステーション（ILRS）計画における月面基地の建設です。ILRSは、中国が主導し、他国との連携も視野に入れて進められている月面での長期滞在や科学研究を目指す大規模プロジェクトです。月面基地の建設には、大量の構造材、生命維持装置、電力供給システム、探査車両といった多様で重い機器や物資を月に輸送する必要があります。長征9号の強力な輸送能力は、まさにこのようなニーズに応えるために不可欠なものです。

ILRS建設への貢献にとどまらず、長征9号は将来的な月面での商業活動、資源探査、さらには火星やその他の深宇宙探査ミッションにおける大型探査機の打ち上げなど、幅広い用途への活用が期待されています。これにより、中国の宇宙活動の範囲と規模は大きく拡大すると見られます。

開発状況

長征9号は現在計画・開発段階にあり、その実現に向けて技術開発が進められています。最初の試験的な打ち上げは、2030年までに行われることが目標として掲げられています。超大型ロケットの開発は技術的に非常に難易度が高く、多くの時間とリソースを要するため、今後の開発の進捗が注目されています。

関連事項

長征9号は、中国の宇宙開発を支える一連のロケットファミリーである「長征」シリーズの最新かつ最大のものです。その開発・運用は、中国国家航天局（CNSA）や関連する宇宙開発機関によって進められています。また、前述のILRS計画は、長征9号の主要なミッションの一つとして密接に関連しています。

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